最新記事
ウクライナ情勢

ウクライナ軍、「数週間内に反転攻勢のブレイクスルーがある」──元米欧州軍司令官

Ukraine Breakthrough Could Come in 'Weeks,' Former U.S. General Says

2023年8月31日(木)19時56分
デービッド・ブレナン

ロボティネ奪還に先駆けて住民を避難させたウクライナ兵(8月22日、ザポリージャ州ロボティネ) 47th Separate Mechanized Brigade/REUTERS

<大地がぬかるむ秋と凍結する冬を前に、ウクライナ軍は決定的な突破口を切り開けると予想>

<動画>ウクライナのために戦うアメリカ人志願兵部隊がロシア軍の塹壕に突入

ウクライナ軍の反転攻勢はウクライナ南部でじわじわと進んでいるが、いまだにゼレンスキー政権が望む決定的な前進、つまり軍の士気を一気に高めた昨年9月のハルキウ奪還のようなブレイクスルーは実現していない。

このままでは、はかばかしい戦果を挙げられないまま、秋雨により大地がぬかるみ、さらには冬季の凍結で攻勢が阻まれる季節に突入しかねない。だが米欧州軍司令官を務めたベン・ホッジス元米陸軍中将はそれまでにウクライナ軍が大きな突破口を切り開く可能性があると、本誌に語った。

「今の感触では数週間以内に(ハルキウ並みの)ブレイクスルーがありそうだ」

ウクライナ政府は軍が反攻に手間取っている理由として、地雷原や塹壕などの強固な防御を慎重に避けながらロシアの戦力を削がなければならないためだと、以前本誌に説明したが、この戦術の正しさがこれから証明される可能性があると、ホッジスは言う。

数カ所突破で戦況が激変

ロシア軍は1500キロに及ぶ戦線の全域に地雷を敷設しているが、「それを全て突破する必要はない」と、ホッジスは言う。「2、3カ所か、多くても4カ所貫通できればいい。それだけで戦況はがらりと変わり、はるかにダイナミックな攻勢が可能になる」

本誌はこの見解についてロシア国防省にメールでコメントを求めている。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、反転攻勢の進捗が「期待したより遅い」ことを認めた。西側諸国はウクライナに成果を出すよう圧力をかけ、今年に入って各国が行なったような大量の武器供与を来年も繰り返すのは難しいと警告している。

NATOの軍事的支援の強化を求めるウクライナに以前から理解を示してきたホッジスは、西側諸国に辛抱強く待つよう呼びかけている。

「情報を守る点では、ウクライナ人は私の知る誰よりもよくやっている。いわゆるオプセク、つまり作戦上の情報セキュリティに関しては規律が徹底している。何が起きているのか、誰が何をしているのか、それぞれの部隊がどういう状況にあるのか、われわれは知らないし、知る資格もない」

つまり、誰もが限られた不確かな情報に基づいて結論を出しているわけだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 9
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 10
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中