最新記事
生涯教育

変化の速い今の社会では「学び直し」の機会がもっと必要だ

2023年8月23日(水)11時00分
舞田敏彦(教育社会学者)
スキルアップイメージ

日本では学校で学ぶ大人が非常に少ない takasuu/iStock.

<働き盛りの40代で学校に在学している割合を見ると、都市部だけでなく地方でも条件によっては割合が高いことがわかる>

2020年の『国勢調査』によると、学校に通っている在学者(15歳以上)は740万人で、そのうちの715万人(96.6%)は25歳未満の青年層となっている。少子高齢化の進行により、国民の年齢構成が「逆ピラミッド」なのとは対照的だ。在学者の割合で見ても、10代後半では90.5%と著しく高いものの、30代は0.5%、40代は0.2%ときわめて低くなる。

社会変化が速くなっていることにより、子ども期に学んだ知識や技術は直ちに陳腐化するので、成人層も学校で学び直す必要性はある。終身雇用の崩壊、雇用の流動化に伴い、「リスキリング」への要請も高まっている。こういう状況の中、学校で学ぶ大人がもっと多くても良さそうなものだが、日本では非常に少ない。どの国も同じわけではなく、フィンランドでは30代の約2割が学生だ(OECD「PIAAC 2012」)。

なお、国内でも地域による違いがある。働き盛りの40代のうち、学校に在学している学生が何%いるかを都道府県別に計算し、高い順に並べると<表1>のようになる。

data230823-chart01.png

あくまで微差だが、注目すべきは上位県の顔ぶれだ。上位には、東京をはじめとした都市部の都府県が多い。大学等の高等教育機関が多く立地しているためだろう。だが都市部ほど高いという直線的な傾向ではなく、沖縄、徳島、高知、宮崎といった地方県も上位にいる。働きながら学校に通える条件を整えている、社会人の受け入れに大学が力を入れている、という要因も考えられる。

2位の沖縄は、所得水準が低く大学進学率も低い。高卒時に経済的理由で進学を諦めた人も少なくないと思うが、子ども期に得られなかった教育機会を取り戻そうとしている人が多いのかもしれない。「18歳時には進学できなかったが、今からでも......」という動機で学んでいる人もいるだろう。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

マレーシア、対米関税交渉で「レッドライン」は越えず

ビジネス

工作機械受注、6月は0.5%減、9カ月ぶりマイナス

ビジネス

米製薬メルク、英ベローナ買収で合意間近 100億ド

ビジネス

スターバックス中国事業に最大100億ドルの買収提案
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワ…
  • 5
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 6
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 7
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 8
    自由都市・香港から抗議の声が消えた...入港した中国…
  • 9
    人種から体型、言語まで...実は『ハリー・ポッター』…
  • 10
    「けしからん」の応酬が参政党躍進の主因に? 既成…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 6
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 7
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中