ウクライナの子供たち2万人を拉致...未曽有の戦争犯罪に突き進むプーチンの目的とは?
UKRAINE’S STOLEN CHILDREN
子供連れ去りに関してICCはプーチン大統領(左)とリボワベロワ大統領全権代表(右)に逮捕状を出した MIKHAIL METZELーPOOLーSPUTNIKーREUTERS
<ロシア占領下のウクライナから1万9000人の子供たちが連れ去られた。プーチンの真の目的は何なのか。本誌「ルポ ウクライナ子供拉致」特集より>
ロシアによるウクライナ侵略で顕在化した深刻な問題の1つに、「子供の連れ去り」がある。
ウクライナ当局によれば、これまでに少なくとも1万9000人のウクライナ人の子供たちがロシア支配地域およびロシア本土に連れ去られているという。そのうち、帰還を果たした子供たちの数はわずか400人足らずといわれ、一度連れ去られてしまった子供たちを取り返すのは容易なことではない。
子供の連れ去りは、ロシアによる侵略開始後、ロシアの支配下に入ったウクライナの東部・南部4州の各所で報告されている。侵略開始からわずか2カ月後の2022年4月の段階では、激戦地となったマリウポリからの女性や子供の連れ去りが英メディアによって報じられ始めた。
その後、同年夏には「子供たちを安全な場所に避難させる」という名目の下、「夏季キャンプ」と称して占領地域の多くの子供たちが連れ去られたことが発覚した。また同年10月には、ウクライナ軍が東部ハルキウ州奪還作戦を進めるなか、撤退間際のロシア軍が急きょ、地域の子供たちをいったん学校に集め、その後集団で連れ去ったという報告もある。連れ去られた先として挙げられるのは、ロシアが14年以降支配を続けるクリミア半島やロシア本土が多い。広大なロシアに連れ去られた子供たちを取り返すことは至難の業である。
現在ウクライナは、国際社会の協力を仰ぎながら、連れ去られた子供たちを取り返すべく全力を挙げている。奮闘しているのは、ウクライナ政府系の組織であれば「チルドレン・オブ・ウォー」、NGOであれば「セーブ・ウクライナ」など。これらの組織により、連れ去られた子供たちがどのような経験をしたのかが徐々に明らかになってきた。
連れ去られた子供たちは「レクリエーション・キャンプ」と呼ばれる施設に送られることが多い。施設の充実度はまちまちで、粗悪な環境に耐える子供も少なくなかったという。ウクライナ語の使用は許されず、ロシア語の教育が実施される。そして「あなたの親はあなたを捨てたのだ」「あなたたちはウクライナから不要だと見なされた」「ウクライナはネオナチの国だ」「ウクライナを捨ててロシア人となれ。大きくなったら祖国ロシアのために戦う兵士となれ」と繰り返し説得される子供たちもいるという。
施設を出されると、ロシア人家庭の養子となる子供も多い。その場合は姓も変更されるため、ウクライナに残された親が子供の行方をたどることは容易ではない。