最新記事
ウクライナ戦争

ロシアの火砲5000門を破壊、砲撃戦を有利に展開しながら勝てないウクライナ

How Russia Lost '5,000 Artillery Systems' in Ukraine

2023年8月16日(水)21時15分
エリー・クック

M109自走榴弾砲の発射準備をするウクライナ兵(8月7日、東部ドネツク州) Viacheslav Ratynskyi-REUTERS

<ユニークなドローン活用で命中率は劇的に向上したが>

【動画】白煙を上げるクリミアの弾薬庫

ロシア軍のウクライナ侵攻開始から1年半近く。ウクライナの反転攻勢で両軍とも深刻な砲弾不足に陥っているが、ロシア軍はこれまでに5000門を超える火砲を失ったと、ウクライナ側はみている。

ロシア軍は昨年2月末の開戦以降、5013門の砲撃兵器を失ったと、ウクライナ軍参謀本部は8月9日に発表した。うち17門は過去24時間の間に失ったとも付け加えた。

本誌はこの数字をロシア国防省に確認中だ。

一方、ロシア側の最新の発表によれば、ウクライナ軍は野砲と迫撃砲を合わせて5803門、多連装ロケットシステムを搭載した戦闘車両を1144台失ったとされている。

砲撃は、侵攻開始当初から両軍にとって極めて重要な攻撃手段となった。難航するウクライナの反転攻勢の最中でも、その事情に変わりはない。

「この戦争では砲撃が極めて大きな位置を占める」と、ハーグ戦略研究所(HCSS)のデービッド・エリソン戦略アナリストは本誌に語った。「敵の後方への砲撃はウクライナ軍の最も重要な戦術であり、それは反転攻勢でも変わらない」

弾切れが怖くて撃ちまくれない

「過去の経験でも地上戦で鍵を握ったのは砲撃だ。今後もそうだろう」と、同じくHCSSのポール・バンフーフト戦略アナリストは言う。

火砲と弾薬はウクライナが求める軍事支援のリストで常に上位を占めてきた。米国防総省は最近、ウクライナに追加の軍事支援を行なったが、その中には早くに供与した高軌道ロケット砲システム(HIMARS/ハイマース)などで使用される砲弾も含まれる。

今回の支援では、多数の子爆弾を広範囲にばらまくクラスター弾も提供された。これに対しては激しい批判が起きたが、バイデン政権は弾薬の供給が間に合わないという理由で供与を断行した。

ウクライナ軍は「弾切れになるのを恐れて砲撃を控えざるを得ず、それが(反転攻勢の)ネックになったと後になって指摘されかねない」と、バンフーフトは言う。ただ、弾薬不足はNATOがウクライナへの支援を渋っているからではない、とも付け加えた。

いくら供給しても、すぐに備蓄が底を突く状況なのだ。「これほど大量の弾薬が消費される戦いは、ヨーロッパでは第2次世界大戦以降、これが初めてだ」と、エリソンは言う。

食と健康
消費者も販売員も健康に...「安全で美味しい」冷凍食品を届け続けて半世紀、その歩みと「オンリーワンの強み」
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

タイ新首相、通貨高問題で緊急対応必要と表明

ワールド

米政権、コロンビアやベネズエラを麻薬対策失敗国に指

ワールド

政治の不安定が成長下押し、仏中銀 来年以降の成長予

ワールド

EXCLUSIVE-前セントルイス連銀総裁、FRB
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中