最新記事

韓国、夏の始まり告げる「初伏」 暑気払いにソウルでは参鶏湯、一部では今も犬肉のポシンタンが......

2023年7月12日(水)18時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
参鶏湯の専門店に並ぶソウル市民

本格的な夏を迎え、暑気払いに参鶏湯の専門店に並ぶソウル市民  JTBC News / YouTube

<暑い夏を乗り越えるための滋養食も時代の流れで変わりつつある>

今年の7月11日は韓国では「初伏(しょふく)」。夏至の後の三度目の庚(かのえ)の日で、本格的な夏の始まりを意味する。暑気払いのため、日本の土用の丑の日と同様にスタミナのつくものを食べることが古くからの習わしだ。韓国料理でスタミナをつけるものといえば、参鶏湯(サムゲタン)と悪名高き犬肉料理の補身湯(ポシンタン)があるが、この食文化にも変化の流れが押し寄せている。JTBC、news1など韓国メディアが報じた。


専門店の価格上昇でコンビニの参鶏湯にも人気

韓国では初伏に滋養に富んだ栄養のつく食事"保養食"を楽しむ文化は今も変わらないが、"保養食"そのものの概念は変わりつつある。有名な参鶏湯の店の前は行列ができるほどだが、一方で、若者たちはコンビニの参鶏湯や野菜の"保養食"など、多様化したメニューで暑さを乗り切ろうとしている。

11日、ソウル中央に位置する鍾路区(ジョンノク)のカモ焼肉店は、初伏を迎えて栄養のあるものを食べようとするサラリーマンらで賑わった。従業員は「うちの鴨の汁物は、漢方の薬剤を入れて調理した保養食です。昨日から若いお客さんが数多くいらっしゃってます」と話した。

一方で外食メニューの価格が上がって上昇し1人世帯が増えたため、手軽な保養食を選ぶ人も増えている。CUなど韓国のコンビニ業界によると、夏の保養食の売上は、昨年比30〜40%も増加しているという。

ソウル市銅雀区(トンジャクク)に住む30代のあるサラリーマンは初伏が近づくとコンビニで参鶏湯を買って食べた。食堂などで食べるのは価格が高いし、待たされることもあるからだ。韓国消費者院によると、ソウルで参鶏湯を飲食店で食べようとすると平均1万6423ウォン(約1800円)を払わなければならない。1年前より12.7%も値上がりしている状況だ。

このサラリーマンは「ボリュームも適当で、鶏粥などと一緒に購買すれば割引もあったので、最近、買ってみました。周りの人たちは美味しくないだろうと心配していましたが、思っていたより大丈夫でした。次の伏日にも買って食べようと思います」と話した。

肉中心から野菜中心の健康食への動きも

また、参鶏湯などの動物性たんぱく質中心の保養食から、野菜中心の健康に配慮した保養食を求める人たちも増えている。SNSでは初伏が近づいた頃から、豆乳素麺、エゴマ豆腐湯などのレシピを共有する人たちが目についた。

数年前から菜食主義を実践しているという40代のある人は、「韓国の伝統的な薬膳料理は肉類を中心のメニューで構成されていますが、今では肉は日常的に接種できる食べ物になりました。伏日のような特別な日は肉中心の食事にする必要はないと思います。私は夏は豆乳素麺などを好んで食べます」と話した。

専門家もこういった現代に合わせた新しい保養食について賛同している。パク・ジョンスク白石大学食品栄養学科教授は「栄養状態が良好な現代では高カロリー、高タンパクな食品の摂取よりも、水分が多くビタミンとミネラルが豊富な食品が体の保養になる」とし、「豆腐、なす料理などは消化がよく抗酸化物質が豊富で、現代人の夏の保養食にぴったりです」とコメントした。

ビジネス
「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野紗季子が明かす「愛されるブランド」の作り方
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシア・ガスプロム、26年の中核利益は7%増の38

ワールド

英、農業相続税の非課税枠引き上げ 業界反発受け修正

ワールド

メキシコCPI、12月前半は+3.72%に鈍化 年

ビジネス

金現物、4500ドル初めて突破 銀・プラチナも最高
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 10
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中