最新記事
スバウキ回廊

<注目マップ>ワグネル部隊がベラルーシから隣国ポーランドに潜入する準備に入った?

Poland Sounds Alarm as Putin Allies Suggest Wagner Will Invade NATO Country

2023年7月31日(月)23時34分
アンドリュー・スタントン

ワグネルの戦闘員と共同訓練に参加するベラルーシ兵(7月20日リリースの写真) Belarusian Defence Ministry/REUTERS

<ロシアで反乱を起こし、ベラルーシに移動したプリゴジンとワグネル部隊がポーランド国境に近づいていると、モラウィエツキ首相が警戒を募らせている>

ワグネルに代わるロシア「主力部隊」の無秩序すぎる姿...RPG発射で「味方を吹き飛ばす」瞬間の映像

ポーランドのマテウシュ・モラウィエツキ首相は7月29日、ロシア民間軍事会社ワグネルの100人以上の部隊がポーランド国境に近いベラルーシ西部のに移動したという情報をもとに、ワグネルがポーランドに対する「ハイブリッド攻撃」を計画している可能性があると警告した。

ポーランド政府はここ数週間、ワグネルによるポーランド侵攻について懸念を高めている。この懸念は、ウクライナ侵攻でロシア軍とともに数カ月間戦ったワグネルが、ロシア軍の指導部に対する反乱未遂事件を起こし、ベラルーシに追放されたことから始まった。

ワグネル部隊がベラルーシに駐留しているという状況によって、ワグネルがポーランドに侵攻し、ポーランド北東部の国境沿いに位置するスバウキ回廊の支配権を掌握しようとするのではないかという懸念が高まっている。この回廊は、ポーランドとリトアニアの間にあり、ロシアの飛び地カリーニングラードとベラルーシに挟まれている。

shutterstock_2246107393.jpeg
ピンが刺さったところがスバウキ回廊。「NATOのアキレス腱」とも呼ばれる脆いところだ  Below the Sky-Shutterstock

ワグネルとロシアがこの回廊を支配することになれば、バルト諸国と他のNATO諸国の間の陸路のアクセスが遮断されることになり、ロシアがバルト諸国に対してより大きな影響力を行使できるようになる可能性がある。

ワグネル戦闘員は変装して潜入か

ウクライナのニュースメディア『ウクライナ・プラウダ』の報道によると、モラウィエツキは29日、ポーランドの情報機関からワグネルの兵士100人以上が国境に向かって移動しているという情報を得たことを明らかにし、状況はさらに危険になっていると警告した。

「これは間違いなく、ポーランド領土へのさらなるハイブリッド攻撃への一歩だ」と。モラウィエツキは語った。「彼らはベラルーシの国境警備隊に変装し、不法移民がポーランドの領土に入るのを助け、ポーランドを不安定化させる可能性が高い。また、不法移民を装ってポーランド領内に入ろうとする可能性も高く、それはさらなるリスクを生み出す」

米国務省の報道官は29日、本誌に対してワグネルの戦闘員がベラルーシにいることは承知しており、状況を注視していると述べた。同報道官は、アメリカは引き続きNATOの領土を隅々まで防衛することに尽力していると付け加えた。

ポーランドはNATOの加盟国であり、加盟国に対する攻撃は、条約第5条により、NATO全体に対する攻撃として扱われる。つまり、ポーランドを攻撃すれば、アメリカとヨーロッパの多くの国から軍事的な対応を引き起こす可能性が高いことを意味する。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    メーガン妃の「下品なダンス」炎上で「王室イメージ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中