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中国が460億円で土地購入した在英大使館移設計画が地元の反対で暗礁に 外交問題化で関係修復に難題

2023年7月17日(月)09時59分
ロイター
英王立造幣局の跡地

中国がロンドン塔の隣に新しい大使館を建設する計画が外交問題に発展しているが、全ては地元の論争から始まった。写真は中国大使館の移転先として提案されている場所の外観。ロンドンで6月撮影(2023年 ロイター/Hannah McKay)

中国がロンドン塔の隣に新しい大使館を建設する計画が外交問題に発展しているが、全ては地元の論争から始まった。ロンドン市内のこの地域の自治体が、世界第2位の超大国を向こうに回し、計画を阻止したのだ。

それからわずか7カ月余り、この問題は外交的な対立へとエスカレート。両国の当局者はロイターに、英中関係の修復に向けた努力に水を差していると語った。

 
 
 
 

中国政府高官2人と英政府高官3人がロイターに語ったところによると、中国政府は公式レベルの会合で、大使館の建設許可が下りなかったことへの不満を表明した。

英政府高官らは今、北京にある大使館の建て替え計画も止まってしまうのではないかと危惧している。既存の敷地は手狭になっており、現地を訪れた人によると、スカッシュのコートを事務所に変えざるを得なかったほどだという。

スナク英首相は現在、国家安全保障上の利益を守りつつ、貿易や気候変動に関して中国と協力関係を築くため、新たな対中アプローチの醸成に努めている。高官らは、大使館を巡る対立がこの努力を台無しにしたと言う。

キャメロン元英首相と習近平国家主席が英国の村のパブでビールをくみ交わし、フィッシュ・アンド・チップスを食べながら英中関係の「黄金時代」を宣言した2015年とは隔世の感だ。

中国が英王立造幣局の跡地に70万平方フィートの大使館を建設する計画を初めて発表したのは2018年だった。中国大使館として欧州最大で、米首都ワシントンにある大使館の約2倍の面積になる。

中国は、ロンドン中心部にある現在の大使館から約6.5キロ離れたこの土地を約2億5500万ポンド(現在の為替レートで約460億円)で購入。自治区の計画担当官らは提案を受け付けたが、地元選出の評議員らがそれを覆し、安全保障上の理由と住民への影響を理由に却下した。

中国高官らはロイターに対し、英国政府が大使館計画を阻止するため、地元の反対を画策したのではないかとの疑念を口にした。

中国側はここ数カ月、英国側との会談で大使館を移転できないことへの不満を表明したと、会談に関わった、あるいは会談の内容を知る4人の関係者が語った。

「間違いなく政治的な問題だ」と、中国高官の1人は言う。

英国高官らはそうした批判を一蹴し、自治体の評議員らによる独自判断だと述べている。

中国は過去10年間、ロンドンへの海外直接投資額が米国に次いで第2位となっており、この問題は大きな影響を広げる可能性を秘めている。

英国高官は「非常に込み入っており、頭の痛い問題だ」と語った。

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