最新記事
経済制裁

「ザルすぎる」アメリカの対中制裁──米連邦政府職員の年金を「制裁対象」中国企業が運用している

THE CHINA LOOPHOLE

2023年6月29日(木)15時02分
バレリー・バウマン(本誌調査報道担当)、ディディ・キルステン・タトロウ(本誌国際問題・調査報道担当)

230704p18_CNA_07.jpg

ワシントンで抗議活動を行うアメリカ・ウイグル人協会のイルテビル理事長 JEMAL COUNTESS/GETTY IMAGES FOR SUMOFUS

「ESG重視」は口先だけ?

TSPでは、アメリカの敵を強化する企業の株式に投資する選択肢が用意されているために、利用者が過度のリスクにさらされる結果を招いているのではないか――FRTIBはこうした批判に反論してきた。

「TSPのMFWにまつわる明確なリスクは存在しない」と、FRTIBのマイケル・ガーバー理事長は昨年9月、ルビオ上院議員への回答書に記している。「このプラットフォームで提供しているファンドは......世界屈指のファンド運営会社によって運営されている」

「また、TSPの利用者を含む全てのアメリカ国民はもともと、証券会社の口座やその他の投資経路により、MFWで提供されているファンドに投資できる。従って、MFWがそのような投資を可能にしたとしても、それによって新たなリスクが生まれることはない」とも、ガーバーはこの回答書で主張した。

「以上の点を踏まえて、FRTIBは、TSPのMFWの在り方を再検討したり、取りやめたり、修正したりすることは考えていない」

世界の太陽光パネルと、その原料となるシリコンとポリシリコンの多くは、中国の新疆ウイグル自治区で生産されている。

キロ・アルファ・ストラテジーズのリストによれば、この地域で事業を行っている関連企業としては、ホシャイン・シリコン・インダストリー(合盛珪業)、GCLテクノロジー(協鑫科技)、新疆ダクォ・ニュー・エナジー(新疆大全新能源)などが含まれる。いずれの会社も取材に応えていない。

新疆ダクォ・ニュー・エナジーは、11年2月にダクォ・ニュー・エナジー(大全新能源)により設立された会社である。この親会社はその4カ月前の10年10月に、ニューヨーク証券取引所に上場したばかりだった。

今年4月半ばの時点で、ニューヨーク証券取引所で取引されているダクォ・ニュー・エナジーの株式の18%近くをブラックロックが保有している。

「ウイグル人は、アメリカの資金が私たちのジェノサイド(民族大量虐殺)に用いられることを防ぐために、できることは何でもやっている」と、アメリカ・ウイグル人協会(ワシントン)のエルフィダル・イルテビル理事長は言う。「(FRTIBは)十分な行動を取っていない。十分に調べていない」

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

バークシャー第1四半期、現金保有は過去最高 山火事

ビジネス

バフェット氏、トランプ関税批判 日本の5大商社株「

ビジネス

バフェット氏、バークシャーCEOを年末に退任 後任

ビジネス

アングル:バフェット後も文化維持できるか、バークシ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 2
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見...「ペットとの温かい絆」とは言えない事情が
  • 3
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1位はアメリカ、2位は意外にも
  • 4
    野球ボールより大きい...中国の病院を訪れた女性、「…
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 7
    「すごく変な臭い」「顔がある」道端で発見した「謎…
  • 8
    「2025年7月5日天体衝突説」拡散で意識に変化? JAX…
  • 9
    なぜ運動で寿命が延びるのか?...ホルミシスと「タン…
  • 10
    海に「大量のマイクロプラスチック」が存在すること…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中