最新記事
中国

LNGを買い占めた中国...過去18年間の取引を検証、浮かび上がった2つの重要テーマ

China’s Big Gas Bet

2023年6月21日(水)12時30分
スティーブン・マイルズ(米ライス大学ベーカー公共政策研究所フェロー)、ガブリエル・コリンズ(同研究所フェロー)

あるいは、20年1月に米中が署名した経済・貿易協定「第1段階の合意」の期限が切れる21年12月末までに、中国が500億ドル分のエネルギー製品を購入する義務を果たそうとしたのかもしれない。ただし、協定では幅広い分野でアメリカ製品を購入することや、知的財産権の保護を目的とした法改正などが求められていたが、中国が履行したものはほとんどなかった。

中国が、世界的な気候変動対策の目標と国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)での自らの公約に従い、21年の夏の終わりに石炭から天然ガスに切り替えることを決めたという可能性はあるだろうか。

仮にそうだとしても、その後すぐに方針を転換している。中国生態環境部の22年度の「中国環境報告」によると、石炭火力発電所や炭鉱の新設が承認され、22年の石炭使用量は4.3%増加したのに対し、天然ガスの使用量は減少した。さらに、22年10月の中国共産党大会で習は、気候変動対策よりエネルギー安全保障が最優先だと宣言している。

中国はウクライナをめぐり、国外には中立的な立場をアピールして、国内では親ロシア的なプロパガンダを続けている。しかし、中国が戦争が近いことを知っていて、LNGを買い占めてヨーロッパに直接的かつ長期的な戦略的不利益を与えたのだとしたら、中国はロシアの同盟国以外の何者でもない。

From Foreign Policy Magazine

ニューズウィーク日本版 大森元貴「言葉の力」
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月15日号(7月8日発売)は「大森元貴『言葉の力』」特集。[ロングインタビュー]時代を映すアーティスト・大森元貴/[特別寄稿]羽生結弦がつづる「私はこの歌に救われた」


先端医療
手軽な早期発見を「常識」に──バイオベンチャーが10年越しで挑み続ける、がん検査革命とは
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウクライナ、ロシア西部にドローン攻撃 戦闘機・ミサ

ワールド

米、ウクライナ軍事支援再開 ゼレンスキー氏が表明

ワールド

ブラジル大統領、報復辞さないと再表明 トランプ氏は

ワールド

米中外相が初会談、「相違点の管理」で合意 首脳会談
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「裏庭」で叶えた両親、「圧巻の出来栄え」にSNSでは称賛の声
  • 2
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 3
    トランプはプーチンを見限った?――ウクライナに一転パトリオット供与継続の深層
  • 4
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 5
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 6
    セーターから自動車まで「すべての業界」に影響? 日…
  • 7
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 8
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 9
    英郵便局、富士通「ホライズン」欠陥で起きた大量冤…
  • 10
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 5
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 6
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 7
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 8
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 9
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 10
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中