最新記事
ウクライナ戦争

ロシアが国境に築いた強固な「竜の歯」は、迂回すればいいだけだった

Russia Spent Billions on Fortifications. Rebels Simply Went Around Them

2023年6月15日(木)20時22分
ブレンダン・コール

ウクライナ内務省の顧問、アントン・ゲラシュチェンコもベルゴルド州知事の「防衛は万全」発言をあざ笑うかのように、ロシアの武装集団はやすやすと同州に侵入できたとテレグラムの自身のアカウントに投稿した。

「塹壕は浅い溝にすぎず、パルチザンはコンクリートの竜の歯を迂回するだけですんだ」

本誌はこの件についてベルゴロド州知事のオフィスとロシア国防省にコメントを求めている。

ベルゴロド州に設置された防衛線と同様のバリケードは、ウクライナ東部と南部のロシア軍の占領地域にも設置されている。これに関して、オープンソースのデータを使ってロシアの軍事活動を監視する分析グループ「コンフリクト・インタリジェンスチーム」の創設者で軍事専門家のルスラン・レビエフは7x7の取材に対して、地上部隊の進軍を妨げることを狙った防衛線はドローン攻撃や砲撃には無力だ、と述べている。

ウクライナ東部と南部の戦闘は「主に砲撃戦であり」、ウクライナ軍は「まず砲撃でロシア軍が設置した防衛用障害物を一掃して」、前線を突破するだろうという。

「作ったふり」要塞

砲撃で破壊できなかった竜の歯はその後に撤去すればいい。要するに「今の状況では、ロシア軍が築いた要塞は役に立たない」と、レビエフは言う。国境地帯においても、住民を避難させ、兵器をウクライナの砲撃の射程圏外に移すほうが合理的だというのだ。

レビエフは別の独立系メディア「シレナ」にも、防衛戦が機能するには、砲兵隊がそこに残るなどして要塞を補強する必要があるが、ベルゴロド州には砲撃を行える兵士は残っていないし、たとえ塹壕にロシア兵が潜んでいても、防衛線の「隙間は埋められない」と述べている。

「そのため、国境に近くて明らかに狙われやすいグライボロンのような地区でさえ、破壊工作グループの侵入を阻止するロシア兵は皆無だった」と、レビエフは言う。ロシアのパルチザンは真っ先にここに入り込み、ここを砲撃の拠点にした。

ベルゴロド州知事が州内の要塞化の完成を大々的に発表したのは、クレムリンと地元住民向けの「仕事をしていますアピール」だったとみられると、コンフリクト・インタリジェンスチームは7x7に述べた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されずに「信頼できない人」を見抜く方法
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中