最新記事
ロシア

極右と極左の呉越同舟──多すぎて複雑な「反プーチン派」の正体について

Homegrown Rebels

2023年5月16日(火)13時09分
アンチャル・ボーラ(フォーリン・ポリシー誌コラムニスト)

ロシアの情報機関・連邦保安局(FSB)のアレクサンドル・ボルトニコフ長官は4月、一連の攻撃に言及。反体制派組織について「ウクライナの特殊部隊と西側諸国の協力者が、ロシア市民の洗脳や兵士としての採用に乗り出している」と語った。

アメリカは、ロシア国内での一連の攻撃について事前に何も知らなかったとして関与を否定した。だが米諜報当局者らは記者団に対し、ウクライナが自分たちに内密で攻撃を行った可能性もあると示唆。

ウクライナは一連の事件への関与を肯定も否定もしておらず、結果として「ウクライナ黒幕説」を黙認している。

秘密裏に展開される抵抗運動などの真実は大抵、後にならないと分からない。だが私たちがロシア反体制派と交わしたやりとりなどからは、一部の反プーチン派組織がウクライナから何らかの支援を受けた可能性が見て取れる。

ポノマレフは、ロシア国内の6つ程度の反プーチン派組織と個人的なつながりがあり、彼らが任務を遂行するためにウクライナからの支援を仲介していると語った。支援の中に兵器や爆発物は含まれていたかを尋ねると、「反プーチン派組織に何が必要かは明白だと思う」と、彼は答えた。

こうした組織はほかにも確認されている。無政府共産主義戦闘組織(BOAK)やストップ・ザ・ワゴン(STW)、極右のロシア義勇軍団(RVC)などだ(ポノマレフが代表のNRAは、その存在を疑問視する向きもある)。

ロシアを変える難しさ

より活発に活動している組織の1つがBOAKだ。共同創設者のドミトリー・ペトロフ(別名イリヤ・レシー)は、シリアでも戦闘経験がある。

BOAKは1月にクラスノヤルスクでシベリア横断鉄道を爆破するなど、いくつかの破壊工作を実行。昨年5月には、モスクワ北部にあるロシア軍の基地に物資を輸送していた鉄道を爆破した。

BOAKはポノマレフが「ウクライナから支援を受けている」と語った組織の1つだが、ウクライナでの戦争が始まる前からあった生粋の反プーチン派組織だ。

極右RVCを率いるデニス・ニキーチン(別名デニス・カプースチン)も、10年以上前から活動を展開している。彼は01年にドイツに拠点を移した後、ヨーロッパのいくつかの国で極右集団に出入りしていた。3月2日には、RVCの工作員がウクライナからロシアのブリャンスク州に侵入。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

英小売売上高、8月は前月比+0.5% 予想上回る

ワールド

韓国、対米自動車関税の早期解決目指す 「日韓の違い

ビジネス

iPhone17、中国で好発進 北京旗艦店に数百人

ワールド

高市氏、党総裁選で公約「責任ある積極財政」 対日投
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 8
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 9
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中