人気を当てにしない「親日」尹大統領、1年目の成績表の中身とは?

Yoon’s Polarizing First Year

2023年5月15日(月)14時13分
カール・フリートホーフ(シカゴ国際問題評議会フェロー)

前政権の高官が捜査の対象になり、起訴されたりすることは、この国では珍しいことではない。だが今回の一連の捜査の背景にあるのは、検察と警察の捜査権をめぐる現在進行中の攻防だ。

文在寅(ムン・ジェイン)率いる前政権は政権交代の直前に、国内で絶大な権力を誇る検察当局の捜査権限を大幅に縮小する法改正を強引に成立させていた。

この法改正で検察の捜査対象は汚職と経済事件に絞られ、公職者や選挙などに関連する犯罪容疑の捜査権は警察に移管された。広い範囲の犯罪を捜査する警察の能力が強化されることになった。

当時の尹は検事総長で、この法改正には公然と反対していた。文政権に反旗を翻した尹は保守派のヒーローとして一躍有名になり、「国民の力」の候補に指名され、大統領選に出馬することになった。

尹の大統領就任から間もない昨年6月、与党は憲法裁判所に訴えて、検察捜査権を縮小させた法改正の無効を主張した。検察の復権を目指す動きだったが、この3月に憲法裁は与党の主張を退け、法改正は今後も有効という判断を示している。

対日関係改善への信念

だがこの判決の前から、尹は大統領権限で、警察とその捜査権限を抑制するための措置を講じていた。

議会は野党・共に民主党が支配しているため、法的な措置は取れない。そこで行政レベルの機構改革で警察の指揮権を握ることにしたのである。行政安全部内に警察を統括する部局を新設し、政府が警察を直接管理できるようにした。

尹政権に批判的な人々は、政府による警察の統制は1970~80年代の独裁時代への逆行だと非難している。全国の警察官僚も抗議の声を上げた。韓国ギャラップによる調査でも、この動きには国民の過半数(51%)が反対していた。ただし与党支持者に限れば65%が賛成だった。

こうなると野党との関係は壊滅的だ。前政権(=野党)の要人を次々に訴追する尹政権が、議会で野党の協力を得られる余地はほとんどない。

国内の米作農家で売れ残った米を政府が買い取ることを義務付ける穀物管理法の改正案を見ればいい。野党・共に民主党が主導した法案で、議会では成立したが、尹は直ちに拒否権を行使した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アンソロピックが追加サービス公表、外部主要ソフトと

ワールド

米政権、10%の代替関税発動 15%への引き上げ方

ワールド

アンソロピック、AI軍事利用の制限緩和しない意向=

ワールド

米国務省、ロシア攻撃で米の利益損なわないよう警告 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    3頭のクマがスキー客を猛追...ゲレンデで撮影された…
  • 5
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    「IKEAも動いた...」ネグレクトされた子猿パンチと「…
  • 8
    「極めて危険」──ゼレンスキー、ロシアにおける北朝…
  • 9
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 10
    武士はロマンで戦ったわけではない...命を懸けた「損…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 5
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 8
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 9
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 10
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中