最新記事
日韓関係

元徴用工問題、「歴史問題は地雷畑、ユン大統領が無事帰還できるのか」と韓国の反応

2023年3月18日(土)10時45分
佐々木和義

「元徴用工」第三者弁済をめぐって、韓国内で賛否両論の声が上がっている...... Jung Yeon-Je/REUTERS

<いわゆる徴用工問題の第三者弁済を巡って、韓国内で賛否両論の声が上がっている......>

日韓の懸案となっている元労働者、いわゆる徴用工問題を巡って韓国の朴振(パク・ジン)外交部長官が3月6日、大法院が日本企業に支払いを命じた賠償金と遅延利息を政府傘下の「日帝強制動員被害者支援財団」が第三者弁済すると発表し、韓国内で賛否両論の声が上がっている。

最高裁に相当する韓国大法院は文在寅政権下の2018年、新日本製鐵(現・日本製鉄)と三菱重工に対し賠償金の支払いを命じる判決を下した。裁判を機に両国の対立が深まり、国交正常化後、最悪の日韓関係を導いた。

第三者弁済に対して、いわゆる徴用工裁判で勝訴した原告15人のうち4人の遺族が同意すると述べ、3人の元労働者が反対を表明しているという。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は今回の決定を大統領選で公約に掲げた日韓関係の改善を実行するものだと話している。

世論調査会社の韓国ギャロップが行ったアンケート調査で、回答者の59%が政府の弁済案に反対、賛成は35%だった。リアルメーターが行った調査でも57.9%が否定的で、良い決定だとする回答は37.8%にとどまっている。一方、日韓関係の改善が必要という回答はギャラップの調査では31%にとどまるが、リアルメーターの調査では67%となっている。

野党代表は、「事実上の対日降伏文書」だと批判

最大野党「共に民主党」の李在明代表は3月8日の党最高委員会議で「(第三者弁済は)事実上の対日降伏文書」だと批判した。「日本にとって最大の勝利であり、韓国にとっては最悪の屈辱だ」と述べ、「(尹政権は)親日売国政権と言われても返す言葉がない」と指摘した。

市民団体「歴史正義と平和な韓日関係のための共同行動(韓日歴史正義平和行動)」も集会を開いて「政府が『植民支配は違法』という憲法の根本的な秩序を損ねた。日本が反省をしているなら謝罪して韓国大法院の判決に従うべきだ」と主張した。

大韓弁護士協会も反対を表明する。日本の反省と賠償への参加に向けた方策が抜け落ちており「深く憂慮する」という声明を出し、革新系弁護士団体、民主社会のための弁護士会も「日本の政府と戦犯企業は謝罪も賠償をしていない。決して同意できない」と批判した。

メディアでは、ハンギョレが「降伏外交」と論じて、歴史を後退させた最悪の解決策と批判している。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

プーチン氏とブダペストで会談へ、トランプ氏が電話会

ビジネス

日銀、政策正常化は極めて慎重に プラス金利への反応

ビジネス

ECB、過度な調整不要 インフレ目標近辺なら=オー

ビジネス

中国経済、産業政策から消費拡大策に移行を=IMF高
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口減少を補うか
  • 2
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 3
    間取り図に「謎の空間」...封印されたスペースの正体は?
  • 4
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 5
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 8
    疲れたとき「心身ともにゆっくり休む」は逆効果?...…
  • 9
    ホワイトカラーの62%が「ブルーカラーに転職」を検討…
  • 10
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 1
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 4
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 5
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 6
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 9
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中