最新記事
高齢化

心身を病んだ89歳米大物議員の「やる気」に周囲は辟易?

Could Dianne Feinstein Be Expelled From the Senate? Don't Count On It

2023年5月22日(月)19時04分
ユアン・パーマー

憲法上、連邦議会の議員が任期終了前に解任されるのは「秩序紊乱行為」のみで、それも上院の3分の2以上の賛成が必要だ。

アメリカの歴史上、議員が解任されたケースは15回しかない。そのうちの14回は160年以上前の南北戦争で南軍を支持した上院議員だった。

最近、現職の上院議員で解任処分寸前までいったのは、オレゴン州選出のロバート・W・パックウッドだ。1995年に10人の女性から性的虐待や暴行を告発されたが、処分が下される前に辞職した。

カリフォルニア州選出のロー・カンナ議員をはじめ議会下院の民主党議員は、ファインスタインの辞任を求めている。だが重要なのは、89歳のファインスタインに引退を促す上院議員がまだいない、ということだ。

復帰後、ファインスタインの帯状疱疹は、脳炎や、ラムジーハント症候群と呼ばれる顔面麻痺を誘発していたことが明らかになった。

それまで最新の医学的な情報が明かされていなかったことから、ファインスタイン陣営は、議会を欠席していた間の本人の病状を一部しか公表していないのではないかという懸念を呼び起こした。

憲法は「秩序紊乱」の内容を定義していないが、ファインスタインの長引く病気がその基準に当てはまるとは思えない、と言うのはサウス・テキサス・カレッジ・オブ・ロー・ヒューストンのジョシュ・ブラックマン教授だ。

「障害のある大統領の解任を可能にする憲法修正第25条に相当する法律が、上院議員の場合は存在しない」と、ブラックマンは本誌に語った。「ファインスタインが除名される可能性はゼロだ」

有権者も解任できない

有権者でさえファインスタインを罷免することはできない。カリフォルニア州は、地方議員や公職者のリコールを認めている19州のうちの1つだが、この法律は連邦議会議員には適用されない。

ファインスタインの病状が悪化したとの報道を受け、カンナ議員はファインスタインに自主的な辞任を改めて要請した。

「私はファインスタイン上院議員を尊敬しており、彼女の復帰と回復を願っている。とはいえ、私は彼女に辞職を要請しており、その立場を維持する」とカンナは声明で述べた。

議会下院では、2002年に議員が除名された例がある。汚職容疑で有罪判決を受けたオハイオ州選出のジェームズ・A・トラフィカント議員だ。

最近では、ニューヨーク州選出のジョージ・サントス下院議員も、選挙資金の横領、失業資金の不正受給、自分の財政状況に関する議会への虚偽報告など多数の罪で起訴され、除名の危機にさらされている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

EU、自動車業界の圧力でエンジン車禁止を緩和へ

ビジネス

午前の日経平均は続落、米雇用統計前の警戒ムード 一

ビジネス

経済同友会の代表幹事に山口・日本IBM社長、新浪氏

ワールド

台湾総統、財政関連法改正に反対 野党主導の議会と溝
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 7
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 8
    「職場での閲覧には注意」一糸まとわぬ姿で鼠蹊部(…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中