最新記事

クリミア奪還

私ならこうしてクリミアを奪還する──米軍事専門家3人

How Ukraine could retake Crimea

2023年5月2日(火)19時00分
イザベル・ファン・ブリューゲン

米欧州軍の元副司令官で欧州政策分析センター(CEPA)の特別研究員であるスティーブン・トゥイッティもカンシアンの予想を支持し、ロシアとウクライナが領有権を争う前線の総延長は約1280キロメートルにのぼると指摘した。

「ウクライナ側がドンバスからヘルソン、クリミアに至るまでの約1280キロメートルの境界地帯すべてを攻撃しようとしているとは思わない」と彼は本誌に述べ。「昨年の夏(のハルキウ)と同じように、ウクライナ側が奪還するのは、その一部だろう。大規模な攻勢に出るのではなく、幾度にもわたって攻勢をかける作戦だと思う」

カンシアンは、ウクライナがクリミアを奪還するために「長期にわたって包囲」する作戦に出るだろうと予想する。「クリミア奪還にあたっては、攻撃ではなく包囲が行われると思う」と述べた。

ウクライナはクリミアを(ロシアから)切り離し、ロシアとクリミアをつなぐ重要な補給路であるクリミア大橋を破壊して「時間をかけて圧力をかけ、(ロシア側が)持ちこたえられないように」するつもりだろうと彼は指摘。「これは大変な作業だが可能ではある。実現できる可能性は、以前よりも高まっている。ウクライナ軍は今や多くの装備を手に入れ、経験や訓練を重ねているため、それがクリミア奪還に役立つだろう」

地上部隊は最終段階

トゥイッティは、ウクライナ側はいずれかの段階で、ロシアがクリミアから「物資であれ人員であれ、補給するのを妨害する」必要があるだろうと言う。カンシアンも同様に、ロシア軍への補給を妨害することがクリミア解放の鍵を握るだろうとした。

「最終的に海岸線まで進軍してクリミアを包囲し、橋を破壊し、補給に使われる船舶を攻撃し、数週間あるいは数カ月にわたってロシア軍の関連施設を攻撃して、その後に地上戦を試みるのではないか」とカンシアンは指摘した。

クリミア奪還のためには、最終的にウクライナ軍はクリミア半島全域に地上部隊を配備する必要があるとトゥイッティは指摘。「地上に部隊を配備しなければクリミアを制圧することはできず、領土を掌握できなければ維持することもできない」と述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:米スタバ、中国で安値合戦に直面 デフレ心

ビジネス

過去の債券買い入れ、利上げ効果弱めた可能性=シュナ

ワールド

タイ内閣、33.4億ドルの予算増額を承認 経済対策

ビジネス

基調的インフレ指標、4月は全指標で前年比伸び率2%
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 2

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 5

    カミラ王妃が「メーガン妃の結婚」について語ったこ…

  • 6

    汎用AIが特化型モデルを不要に=サム・アルトマン氏…

  • 7

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 8

    プーチンの天然ガス戦略が裏目で売り先が枯渇! 欧…

  • 9

    台湾を威嚇する中国になぜかべったり、国民党は共産…

  • 10

    トランプ&米共和党、「捕まえて殺す」流儀への謎の執…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像を…

  • 5

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 6

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 7

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 8

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 9

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 10

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中