最新記事
イスラエル

イスラエル警察のモスク襲撃に始まった暴力がシリアに拡大、ネタニヤフの狙いは

Israel Launches Strikes on Syrian Targets as Tensions in Region Mount

2023年4月10日(月)20時28分
カレダ・ラーマン

イスラエル軍は9日未明にさらに2度目の空爆を行い、ロケット弾のうち2発がゴラン高原のイスラエル占領地に到達した。1発は迎撃され、2発目は空き地に着弾したという。

AP通信はまた、レバノンの衛星テレビ局アルマヤディーンの報道として、ダマスカスに拠点を置く親シリア政権派のパレスチナ人グループが8日、ミサイル3発を発射したと犯行声明を出したことを伝えた。

アルマヤディーンTVは「アルクドゥス旅団」と名乗る組織がアルアクサ・モスクへの襲撃に対する報復としてロケット弾を発射したと報じたが、AP通信によれば、この組織は、同名の大規模なパレスチナ・イスラム教武装組織とは異なる集団だという。

エルサレム旧市街にあるアルアクサ・モスクは、イスラム教で3番目に神聖な場所だ。そして、ユダヤ人にとって最も神聖な「神殿の丘」と同じ場所にある。

イスラエルの歴史家で、エクセター大学パレスチナ研究センターのイラン・パッペ所長は9日、本誌にこう語った。「ほとんどのメディアが見逃しているが、最も重要な事実は、現在のような攻撃の応酬が起きていなかったら、どうなっていたかということだ。イスラエル国内での反政府デモが激化し、頭脳と投資の流出がますます進み、エリート予備役の招集拒否が増えていただろう。これに加えて、アメリカとイスラエル間の緊張が高まり、国際舞台におけるイスラエルの孤立化が進むことになっていただろう」

今年はイスラム教のラマダンとユダヤ教の過越の祭、キリスト教のイースターの日程が重なっている。そのため、「ハラム・アッシャリーフ(神殿の丘)とアルアクサ・モスクに対する暴力的な襲撃で、反イスラエルの統一戦線ができることは明らかだった。それは逆にベンヤミン・ネタニヤフ政権の求心力回復に役立つ可能性がある。イスラエルのユダヤ人社会が結束を固めるうえで、小さな戦争ほど適切なものはない」

逆に「もしイスラエルで内戦が起きれば、75年間イスラエルの完全支配が続いたイスラエルとパレスチナのパワーバランスが変わる可能性もある」

<関連記事>
エルサレムのイスラム教礼拝所でイスラエル警察とパレスチナが衝突 報復の軍事攻撃が拡大か
パレスチナ紛争再び激化の恐れ ラマダンにエルサレムで衝突

ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米、中国に関税交渉を打診 国営メディア報道

ワールド

英4月製造業PMI改定値は45.4、米関税懸念で輸

ビジネス

日銀、政策金利を現状維持:識者はこうみる

ワールド

韓国最高裁、李在明氏の無罪判決破棄 大統領選出馬資
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中