最新記事
トランプ

34件もの罪状を抱えた、トランプ訴追劇場の今後の行方は?

Trump Indicted in NY

2023年4月6日(木)15時26分
マーク・ジョセフ・スターン
トランプ

テキサス州で行われた選挙イベントに登場したトランプ(3月25日) SERGIO FLORESーBLOOMBERG/GETTY IMAGES

<刑事事件で起訴された初の大統領経験者となったトランプ。「口止め料」隠蔽のための業務記録改ざんは不発でも、疑惑がいっぱい>

3月30日、ついにドナルド・トランプが起訴された。大統領選の投票日を目前に控えた2016年10月、元ポルノ女優ストーミー・ダニエルズに「口止め料」を支払うに当たり、トランプが法を犯したとされる。ニューヨーク州マンハッタン地区検察のアルビン・ブラッグ検事が提案し、マンハッタンの大陪審が投票で起訴相当と認めたものだ。

ただし公判で陪審員全員を説き伏せ、有罪とするのは難しそうだ。不可能ではないが、かなり厳しい。なにしろ被告は前大統領で、しかも来年の大統領選への立候補を表明している。その男を裁こうというのだから、地方検事にとっては、いや刑事司法のシステム全体にとっても、一世一代の大勝負となる(なお本稿執筆時点で起訴内容の詳細は発表されていない)。

トランプの訴追に向けた司法手続きはほかにも進んでいる。起訴までこぎ着けたのは本件が最初だが、有罪宣告までのハードルは最も高い。そもそも大統領経験者の起訴はアメリカ史上初であり、トランプ陣営は既に再選に向けて動き出している。共和党から「政治的弾圧」だとする非難の大合唱が起きるのは必至であり、検察側は最初から防戦を余儀なくされる。

なにしろ本件を取り巻く状況は極めて異例であり、検察側は前例や過去の判例を引き合いに出して容疑を固めることができない。だからトランプ側が、起訴の正当性を争う余地はいくらでもある。

疑われている事実経過は次のとおりだ。16年のある時期、ダニエルズは代理人を通じてタブロイド紙のナショナル・エンクワイアラーに、トランプとの不倫に関する暴露話の提供を持ちかけた。だが同紙発行人のデービッド・ペッカーはトランプの長年の友人で協力者でもあったから掲載を拒み、ダニエルズが暴露をもくろんでいることをトランプ側に知らせた。

州法では重罪に相当

そこで、長年トランプの尻拭いをしてきた弁護士マイケル・コーエンの出番となり、彼は自分のペーパーカンパニーを通じて、ダニエルズに口止め料として13万ドルを渡した。

これを受けて、トランプは自分の会社からコーエンに42万ドルを支払ったが、その際、この支出を架空の契約に基づく弁護士費用として計上した。大統領候補である自分が性的スキャンダルの暴露を防ぐために口止め料を払った事実を隠蔽するためだったが、この行為が業務記録の不正な改ざんに当たるとされる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中