最新記事

フィンランド

NATO加盟で必要となる、フィンランドの新しい「国家の物語」

NATO’s Finnish Expansion

2023年4月4日(火)14時38分
エミリー・シュルタイス
エルドアン大統領,ニーニスト大統領

エルドアン大統領(右)と協議したフィンランドのニーニスト大統領(3月17日) PRESIDENTIAL PRESS OFFICEーREUTERS

<ロシアと西側との間で慎重なバランスを取ってきたフィンランド。しかし、軍事的中立を捨てることで「アイデンティティクライシス」に>

ロシアのウクライナ侵攻に危機感を覚え、フィンランドがNATO加盟申請を行ってからおよそ10カ月。3月30日にトルコ議会が加盟を認める法案を承認したことで、フィンランドの加盟が決定した。

ハンガリーとトルコの反対により承認は遅れ、同時に加盟申請したスウェーデンはまだだが、ひとまずフィンランドが西側軍事同盟の31番目の加盟国となることが確定した。そして、フィンランドが数十年来守ってきた軍事的中立を捨てることも。

ロシアと約1300キロに及ぶ国境を接し、「フィンランド化」と称される中立外交に象徴されるようにロシアと西側諸国の間で慎重なバランスを保ってきたフィンランドにとって、NATO加盟は一大事だ。

と同時に、ロシアが一線を越えたときのためのいわゆる「NATOオプション」を着々と準備してきた安全保障政策の集大成ともいえる。

昨年2月のロシアによるウクライナ侵攻まで、フィンランドは長年、軍事的非同盟に満足していた。ロシアと経済的・外交的関係を保つ最善のシナリオを信じつつも、最悪のシナリオも想定していた。

「ロシアの侵攻がなければNATO加盟は考えなかっただろう」と、アレクサンデル・ストゥブ元首相は言う。

「一夜にしてとは言わないが、数日にして世論が一変した。恐怖もあるが、現実主義的でもある。あんなふうに(ロシア大統領ウラジーミル・)プーチンが無実のウクライナ人を虐殺できるのなら、フィンランド人に同じことをしない保証はないだろう、と」

ストゥブが率いた中道右派の国民連合党は、NATO加盟を主張してきた数少ない政党だが、今やサンナ・マリン首相の与党・社会民主党はじめ主要3政党が漏れなく加盟を支持する。それだけに、4月2日のフィンランド議会選挙の選挙戦でも、NATO加盟は争点にすらならなかった。

国家観の再構築が必要

中立を貫いてきたとはいえ、フィンランドはゆっくりと確実に西側の安全保障・軍事的枠組みに統合されつつあったと、安全保障専門家らは分析する。1995年にはEUに加盟し、2014年のロシアのクリミア併合後は欧州への傾斜をさらに強めた。

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「気持ち悪い」「恥ずかしい...」ジェニファー・ロペ…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中