最新記事

ウクライナ情勢

ロシア侵攻から1年 ゼレンスキーが見せた「想定外」の徹底抗戦

2023年2月20日(月)10時15分


SNSで世界を味方にしたゼレンスキー

ロシアが侵攻を開始した直後、ウクライナの命運が風前の灯火となる中で、ゼレンスキー大統領はスマートフォンによる自撮り映像で、自分もウクライナも戦いを止めないと宣言した。

「ヤ・トゥート」と、ゼレンスキー氏は言った。「私はここにいる」という意味だ。

ゼレンスキー氏が開戦以来続けているソーシャルメディア上の「攻勢」はここから始まった。依頼、「私たちは勝つ」というシンプルなメッセージを発信し続けている。

ロイターの記者は、前線に近い地下壕で、ゼレンスキー氏が配信する年頭演説を見たウクライナ軍兵士が涙を流すのを目撃した。

「今年は、ウクライナが世界を変える年だ。世界はウクライナを発見したのだ。私たちは降伏しろと言われた。だが、私たちは反撃することを選んだ」と、ゼレンスキー氏は語りかけた。

対照的に、プーチン氏は不機嫌で孤立しているように見えることが多く、大統領府にこもって西側諸国やウクライナに脅しの言葉を発信し、演出されたイベントを除けば公の場に姿を見せることもめったにない。

街を見下ろす大統領府でゼレンスキー氏に会うため、キーウには他国の首脳や要人、著名人が長時間の電車移動もいとわずやってくる。他国からの支援も何十億ドルも流れ込んでいる。

側近らによると、ゼレンスキー氏が侵攻開始後にこなした他国首脳や国際機関のトップとの電話会談は377回、各国議会や他国市民の前での演説は41回、会合出席は152回に及び、それ以外にも多数の演説を行っている。

国内政治は「休戦」

ゼレンスキー氏は、製鉄の街クリブイリフでユダヤ人家庭に生まれた、ロシア語話者のウクライナ人だ。キャリアの出発点は俳優だった。

政治腐敗にうんざりしていたウクライナ国民の心情に沿ったテレビドラマ「国民の僕(しもべ)」シリーズの主役を演じ、知名度を上げた。

このドラマでゼレンスキー氏は誠実な学校教師を演じた。教室で政治腐敗への不満をぶちまけた様子がネットで人気を集め、大統領となって、腹黒い政治家やビジネスマンを出し抜く活躍を見せるという筋書きだ。

2019年、現実がドラマを模倣することになった。ゼレンスキー氏は、腐敗根絶を選挙公約に掲げて大統領に当選。選挙運動はソーシャルメディアへのユニークな投稿を武器にしていた。それは、戦火の下で同氏が展開する活発なオンライン活動の予兆だった。

ロシアによる侵攻開始直後に撮影された動画で、ゼレンスキー氏は、情報機関からの報告として、ロシア政府が同氏を第1の標的、妻オレナ・ゼレンスカさんと2人の子どもを第2の標的と宣言したと語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

金正恩氏が列車で北京へ出発、3日に式典出席 韓国メ

ワールド

欧州委員長搭乗機でGPS使えず、ロシアの電波妨害か

ワールド

ガザ市で一段と戦車進める、イスラエル軍 空爆や砲撃

ワールド

ウクライナ元国会議長殺害、ロシアが関与と警察長官 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 2
    世界でも珍しい「日本の水泳授業」、消滅の危機にあるがなくさないでほしい
  • 3
    映画『K-POPガールズ! デーモン・ハンターズ』が世界的ヒット その背景にあるものは?
  • 4
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 5
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 6
    BAT新型加熱式たばこ「glo Hilo」シリーズ全国展開へ…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    就寝中に体の上を這い回る「危険生物」に気付いた女…
  • 9
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 10
    シャーロット王女とルイ王子の「きょうだい愛」の瞬…
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 3
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 8
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 9
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 10
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中