最新記事

報道

「罪悪感はない」...あなたの日常にも、実は大きく影響している「地下経済」に生きる人々

I Look Into Dark Corners

2023年2月23日(木)14時55分
マリアナ・バンゼラー(調査報道ジャーナリスト)
ジャーナリストのマリアナ・バンゼラー

番組でメキシコの警察関係者に話を聞く筆者 EVERETT COLLECTION/AFLO

<違法取引、不法移民の密入国、違法薬剤の製造......。ジャーナリストとして、そうした問題全てに共通する構図を追って>

ジャーナリストになりたいと思ったのは、12歳のときだった。祖国のポルトガルで見ていたテレビのニュースキャスターたちに魅了されたのだ。キャスターたちは、広い世界で起きていることを知り尽くしているように見えた(テレプロンプターに表示される原稿を読んでいるなんて、思いも寄らなかった)。

ポルトガルの大学に通っていたとき、コロンビア大学ジャーナリズム大学院に出願したけれど、不合格。翌年も不合格。その翌年、ようやく入学を許可された。

こうしてコロンビア大学での日々が始まって1カ月。前の夜遅くまで勉強していた私は、電話の音で目を覚ました。電話は、前にインターンをしていたポルトガルのテレビ局の報道局からだった。

マンハッタンで恐ろしいことが起きたという。こちらにいるポルトガル人ジャーナリストで心当たりがある人物は私しかいないとのことだった。すぐにミッドタウンのビルの屋上に上がって、リポートしてほしい、と言われた。

2001年9月11日の朝だった。テレビをつけると、倒壊する世界貿易センタービルの姿が映し出されていた。私は慌てて部屋を飛び出した。

この日、多くの人の人生が変わった。私もその1人だった。ジャーナリストとしてどのような報道をしたいのかがはっきり見えてきたのだ。

現場に身を置いて調査報道をしたいと思った。どうしてこんな事件が起きたのか、こうした恐ろしいことをする人たちを突き動かした動機は何だったのかを知りたかった。

大学院を修了するとすぐに中東のシリアに渡り、アラビア語を勉強し、フリーランスのジャーナリストとして活動し始めた。03年、米軍がイラク侵攻を開始して間もない時期のことだ。私は安価な手持ちカメラを買うと、恋人(現在の夫)のダレン・フォスターと一緒に取材を始めた。

現地の友人を通じて、シリア人やそのほかの外国人が米軍と戦うためにイラクに入っていると知った。そこで、私たちはシリアとイラクの国境地帯に向かった。

村々には、殉教者たちを称賛するポスターが掲げてあった。イラクでの戦闘に参加して命を落とした地元の男たちをたたえるためのものだ。

当時、イラク駐留米軍への攻撃が散発的に起きていたが、それは旧フセイン政権の残党によるものと言われていた。

しかし、私たちが取材したシリアの若者たちは、正義感に突き動かされて戦闘に参加し、地元に帰還後は英雄として迎えられていた。そうした若者たちは、それまで想像していた「正気を欠いた過激派」とはまるで違った。

私たちは取材を終えると、アメリカのいくつかのテレビネットワークに、リポートを番組で使わないかと売り込んだ。私たちのリポートを褒めてくれる人は多かったが、どのネットワークも放映には消極的にみえた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EUのロシア産原油輸入停止法制化案、ハンガリー議会

ワールド

トランプ氏、一般教書演説で「強く繁栄する米国」強調

ワールド

米政府、インドなどアジア3カ国の太陽光製品に暫定的

ワールド

国連総会、ウクライナ支持決議を採択 米は「交渉の妨
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    3頭のクマがスキー客を猛追...ゲレンデで撮影された…
  • 5
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    「極めて危険」──ゼレンスキー、ロシアにおける北朝…
  • 8
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 9
    「IKEAも動いた...」ネグレクトされた子猿パンチと「…
  • 10
    武士はロマンで戦ったわけではない...命を懸けた「損…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 5
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 8
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 9
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 10
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中