最新記事

ウクライナ情勢

「ロシアは勝てないが、ウクライナも勝てない」──「粘り勝ち」狙いのプーチンと戦争が終わらない理由とは?

Slim Chances for Peace

2023年2月1日(水)12時30分
デービッド・ブレナン(本誌米国版外交担当)

230207p36_UKN_02.jpg

電撃訪米したゼレンスキーとバイデン(22年12月) DEMETRIUS FREEMANーTHE WASHINGTON POST/GETTY IMAGES

彼によれば、プーチンの命運は作戦の成功に懸かっている。

「失敗したらロシアはおしまいで、プーチンもおしまいだ。もしもプーチンが失敗したら、後を継ぐのはさらに強硬な連中だろう。(クレムリンには)ハト派はいない......いたら投獄されている」

昨年12月にゼレンスキーはワシントンを訪問。ジョー・バイデン米大統領は、2人は戦争の終結について「全く同じビジョンを共有している」と語り、2014年以降にロシアに占領された全ての領土を奪還するというゼレンスキー政権の目標を支持していることを示唆した。

ゼレンスキーの訪米を受けてロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、「ワシントンの会談で、ウクライナもアメリカも平和を求めていないことが分かった」と批判した。「彼らは戦闘を継続することだけを考えている」

米政府関係者は、ウクライナとロシアの交渉の再開はほとんど期待していない。一方で、アメリカがウクライナの要求を軟化させようとしている節もある。マーク・ミリー米統合参謀本部議長は11月に、14年にロシアに併合されたクリミア半島を、ウクライナ軍が近く解放できる見込みは「高くない」と述べている。

アメリカはウクライナの限界を認識する必要があると、ダールダーは言う。「ウクライナが勝つ可能性は低い。現実としてロシア軍はかなり深く食い込んでおり、少なくともウクライナ軍がハルキウ(ハリコフ)やヘルソンで行ったような戦略的な方法で彼らを追い払うことは、非常に難しいだろう」

開かれた扉のジレンマ

NATOとEUの指導部は、ウクライナが定義するウクライナの勝利を、引き続き支持することを明確にしている。イエンス・ストルテンベルグNATO事務総長とウルズラ・フォンデアライエン欧州委員会委員長は1月10日に共同の記者会見で、加盟国にウクライナへの武器供与を継続するように促した。

ただし、NATOとEUへの加盟というウクライナの究極の野望は、より複雑な状況に直面している。ゼレンスキーは加盟について「迅速な手続き」を求めたが、加盟諸国から非現実的だとして退けられた。ウクライナが欧州大西洋圏の仲間入りを果たすまでには、公には温かい言葉を投げかけられているが、長い道のりが待ち受けている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

過激な言葉が政治的暴力を助長、米国民の3分の2が懸

ビジネス

ユーロ圏鉱工業生産、7月は前月比で増加に転じる

ワールド

中国、南シナ海でフィリピン船に放水砲

ビジネス

独ZEW景気期待指数、9月は予想外に上昇
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中