最新記事

ロシア

ロシア強硬派、「アラスカ奪還」主張で米ロ間に新たな火種

Russian State TV Revives Effort to Reclaim Alaska From U.S.

2023年2月13日(月)18時14分
マシュー・インペッリ

1867年にアメリカが購入するまで、アラスカはロシアの領土だった  Peter Hermes Furian-Shutterstock

<ロシアがウクライナ侵略で非難されるなら、ロシアからアメリカが「奪った」アラスカも取り戻せ、という論理が浮上>

ロシアはアメリカからアラスカを取り戻すべきだ、とロシアの有識者が国営放送で主張した。

デイリー・ビースト紙のコラムニスト、ジュリア・デイビスが運営するYouTubeチャンネル「ロシアン・メディア・モニター」は2月10日、ロシアの国営ニュースチャンネル「ロシア1」の動画を掲載した。そのなかで、ロシアの中東研究所のエフゲニー・サタノフスキー所長はナポレオン戦争後に欧州で開かれたウィーン会議についてこう語っている。

「ウィーン会議(1814〜15年)はポーランドがロシア帝国に属することを認めた。フィンランドがロシア帝国に属することも認めた。私は(ソ連・東欧社会主義体制の崩壊に道を開いた)1975年のヘルシンキ宣言で確認された国境線ではなく、少なくともウィーン会議当時の国境線に戻るべきだという意見に同意する」

アメリカ議会図書館によると、アメリカがロシアからアラスカを720万ドルで購入したのは1867年だ。

「ロシアとの条約は、ウィリアム・シュワード国務長官とエドゥアール・ド・ストエクル駐米ロシア公使の交渉で締結され、署名された。何の役にも立たない土地を買ったとアラスカ購入を批判する人々は、この売買を『シュワードの愚行』と呼んだ」

ワシントンポストによると、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、2014年に国民との対話で、アメリカからアラスカを取り戻すことはできないかと質問された。プーチンは「なぜアラスカが必要だと思うのか」と聞き返し、ロシア国民はアメリカの州について「騒ぎたてるべきではない」と述べた。

米ロは戦争状態

だがウクライナ戦争が続く中、ロシアとアメリカの緊張は高まり続け、最近ではロシア政府内の強硬派がアラスカ奪還の可能性を口にし始めている。ウクライナ戦争において、アメリカをはじめ欧米諸国がウクライナに防衛のための兵器など軍事支援を続けていることを、ロシアは非難している。

昨年7月、ロシア国家院のビャチェスラフ・ボロージン議長は演説を行い、アメリカの対ロシア制裁への対抗策の一環として、アラスカ奪還を取り上げた。

AP通信によると、ボロージンは「海外でわれわれの資産を収奪しようとするアメリカの議員らは、ロシアにも取り戻すものがあることを認識すべきだ」と述べたという。

また、昨年7月にはシベリアの通信社NGS24が、ロシア連邦中部のクラスノヤルスク市内に「アラスカはわが領土」と訴える看板がいくつか出現したと報じている。

アラスカ州のマイク・ダンリービー知事は、ボロージンの発言に反応し、「アラスカを取り戻せると信じているロシアの政治家たちへ。幸運を祈る」とツイートした。

ロシア国営テレビの番組に出演したウクライナ侵攻を支持する政治評論家ドミトリー・クリコフは、アラスカについて語っただけでなく、ロシアとアメリカは 「1945年以降、戦争状態にある」と述べている。

ニューズウィーク日本版 BTS再始動
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年4月7号(3月31日発売)は「日本企業に迫る サステナビリティ新基準」特集。国際基準の情報開示や多様な認証制度――本当の「持続可能性」が問われる時代へ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国防長官のブローカー、イラン攻撃前に巨額の防衛関

ビジネス

小売販売2月は0.2%減、2カ月ぶりマイナス ガソ

ワールド

ホルムズ海峡付近でタンカー被弾・炎上、クウェート船

ワールド

中東紛争、アフリカ経済への打撃は限定的か=アフリカ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    アリサ・リュウの自由、アイリーン・グーの重圧
  • 4
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 5
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 6
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 7
    初の女性カンタベリー大主教が就任...ウィリアム皇太…
  • 8
    ビートルズ解散後の波乱...「70年代のポール・マッカ…
  • 9
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 10
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 5
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 6
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 9
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 10
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中