最新記事

日本のヤバい未来 2050

日本の製造業は高齢者と外国人が主力、人口減少で革新的ヒットが生まれづらくなるこれだけの理由

THE FORECAST FOR SHRINKING JAPAN

2023年1月31日(火)16時45分
河合雅司(作家・ジャーナリスト)

少子化に伴う人手不足は、やがて年功序列や終身雇用といった日本特有の労働慣行を終わらせる。年功序列は定年などで退職する人数と同等か、それ以上の採用が安定的に続くことを前提としているからである。

年功序列が崩壊すれば雇用は流動化するので、終身雇用も終わる。企業はもはや、人々を支え切る存在ではなくなったことを認識する必要がある。

この1年間に生まれた子供の数をカウントすれば、20年後の20歳、30年後の30歳の人数はほぼ確実に言い当てられる。例えば、20年後の20代前半の人口は2022年に比べて4分の3程度となる。これほど減ったのでは、企業も人事計画を見直さざるを得なくなるだろう。大企業や人気業種でも、求める人材を十分採用できなくなるところが出てくるに違いない。

これほどの若年世代が減少するというのに、年功序列や終身雇用を無理に続けようと単純に定年年齢を引き上げたならば若手に閉塞感が広がり、各組織はマンネリズムに支配されることになる。少子化がもたらす最大の弊害は、各所で若い世代が極端に少ない状況が常態化し、社会や組織の活力がそがれることである。

同じようなメンバーで議論を重ねていても、似たようなアイデアしか出てこない。日本経済に新たな成長分野がなかなか誕生しなくなったことと、少子高齢化は決して無関係ではないのだ。

マーケットの縮小と人手不足の深刻化が避けられないというのに、人口減少などどこ吹く風と言わんばかりに、どの業界も大規模な事業計画がめじろ押しである。いまだに売上高の拡大を目指す経営者が少なくない。だが、このまま拡大路線を貫き、現状維持を模索していったならば、必ずどこかで行き詰まる。

日本が人口減少に打ち勝つには、マーケットが縮小しても成長するビジネスモデルへと転換するしかない。それには「戦略的に縮む」ことだ。各企業が成長分野を定め、集中的に投資や人材投入を行うのである。過去の成功体験や現状維持バイアスを捨て去ることが必要だ。

まずすべきは、人口減少がもたらす弊害を正しく知ることである。各産業はそれぞれ独自の課題も抱えるが、人口減少が主な産業や仕事にもたらす影響を見ていきたい。

◇ ◇ ◇


製造業界に起きること

230207p20_chart01manu.jpg

まずは日本のGDPの約2割を占める製造業だが、急速に高年齢化している(上の図参照)。経済産業省などの「2022年版ものづくり白書」によれば、34歳以下の就業者を2002年(384万人)と2021年(263万人)で比較すると121万人の減少だ。2021年時点の34歳以下は25.2%でしかない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

行き過ぎた動き「正すこと必要」=為替について鈴木財

ワールド

中国、月の裏側へ無人探査機 土壌など回収へ世界初の

ビジネス

ドル152円割れ、4月の米雇用統計が市場予想下回る

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想以上に鈍化 失業率3
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 6

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 10

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中