最新記事

テクノロジー

世界初「ロボット弁護士」が来月、法廷で人間を弁護する

2023年1月27日(金)17時55分
佐藤太郎

12歳からコードを書いていた天才エンジニアが世界を変える(写真はイメージ) style-photography/iStock

<天才エンジニア少年の作ったサービスは、高額な弁護費用を賄えずに泣き寝入りしていた人たちに「力」を与える。テックが人の痛みを救う、そのあるべき姿を体現する一例が今現実のものになろうとしている>

2016年に小さなスタートアップが産声をあげてから7年目にして、ついにロボットが人間を弁護する日を迎える。

2023年2月、交通違反の初日の裁判で被告側の弁護を、DoNotPayが提供する「ロボット弁護士」が務めることが決まった。裁判の全行程で被告に助言を行い、弁護する。ロボットによる弁護が行われる、世界で初めてのケースと報じられている

ロボット弁護士はスマートフォン上で動作し、法廷の進行を聞いてから、イヤホンを通じて被告に発言内容を指示する。

裁判所の場所や被告人の名前などは伏せられている。

コロナで爆発的に伸びた「ロボット弁護士」

米国を拠点とするDoNotPayは、人工知能(AI)を用い、チャットボットを通じて、日常の法律手続きの文書作成や申請を支援してくれる「ロボット弁護士」を提供するスタートアップだ。米国と英国でサービスを提供している。

●DoNotPayのチャットボット デモ画面


CEOはイギリス出身のジョシュア・ブラウダー(Joshua Browder)。12歳からコードを書いていた天才エンジニアのブラウダーは、運転が苦手なためよく駐車違反のチケットを切られ、1件300ドルの罰金が数十件も溜まった経験をもつ。

スタンフォード大学の貧乏学生だった彼に罰金の支払いは痛い。弁護士に頼むお金もない。回避する方法を徹底リサーチし、回避方法と、警官のノルマ達成のために庶民が苦しんでいることに気付いた。

Fs7pZ3p7_400x400.jpeg
●創業者兼CEOのジョシュア・ブラウダー Twitter/@jbrowder1


「個人の存在は弱く、政府や企業に騙し取られている。弁護士に頼むにも庶民には手が届かない。テクノロジーで個人の権利を取り戻すことが、エンジニアとしての自分の使命だ」と、20歳で起業した。

人々が「企業と戦い、官僚主義を打ち破り、ボタンを押すだけで誰でも訴えることができる」ようにしたいと考えている。

DoNotPayのユーザーはコロナで爆発的に伸びた。渡航禁止でフライトをキャンセルしても返金されない、もしくは使うか分からないクーポンなどで補償されるケースも多発した。ここで脚光を浴びたのがDoNotPayだ。弁護士に相談するかのようにボットの質問に回答していくと、エアラインの務部宛に申請書を作成し代行してメールで送ってくれる。庶民の救世主だ。

人間の弁護士にAIが取って代わる世界を目指す

2月に予定される裁判でAIが敗訴した場合、DoNoPayは罰金を負担することに同意していると、CEOのブラウダーは述べている。

彼の究極の目標は、被告がコストを抑え、DoNoPayのロボット弁護士が、人間の弁護士に完全に取って代わること。「弁護士が1時間に何百ドル、何千ドルも請求するのはおかしい」と、New Scientistに語った。

「欧州人権裁判所で議論するような優秀な弁護士はまだまだ必要だろうが、多くの弁護士は文書をコピー&ペーストすることに、にあまりに多額の請求をしているだけ。彼らのような弁護士は間違いなくロボットに置き換えられると思いますし、そうなるべきだと思う」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

仏総合PMI、9月は5カ月ぶり低水準 製造・サービ

ビジネス

独総合PMI、9月速報は1年4カ月ぶり高水準 サー

ワールド

インド総合PMI、9月は61.9に低下 予想も下回

ビジネス

アングル:Z世代が変える高級ブランド市場、グッチな
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 2
    筋肉はマシンでは育たない...器械に頼らぬ者だけがたどり着ける「究極の筋トレ」とは?
  • 3
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分かった驚きの中身
  • 4
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 7
    「より良い明日」の実現に向けて、スモークレスな世…
  • 8
    米専門職向け「H-1B」ビザ「手数料1500万円」の新大…
  • 9
    「汚い」「失礼すぎる」飛行機で昼寝から目覚めた女…
  • 10
    【クイズ】世界で2番目に「コメの消費量」が多い国は…
  • 1
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 2
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分かった驚きの中身
  • 3
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 4
    筋肉はマシンでは育たない...器械に頼らぬ者だけがた…
  • 5
    【動画あり】トランプがチャールズ英国王の目の前で…
  • 6
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 7
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 8
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 9
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 10
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中