最新記事

宇宙

「水の惑星!」広大な海で覆われた惑星の候補が2つ発見される

2022年12月29日(木)09時11分
松岡由希子

「『水の惑星』と確信できる惑星を観測したのはこれが初めてだ」 andrej67-iStock

<赤色矮星「ケプラー138」を公転する太陽系外惑星「ケプラー138c」と「ケプラー138d」は、その体積の大部分を水が占める「水の世界」かもしれない......>

218光年先のこと座方向にある赤色矮星「ケプラー138」を公転する太陽系外惑星「ケプラー138c」と「ケプラー138d」は、その体積の大部分を水が占める「水の世界」かもしれない。
カナダ・モントリオール大学らの研究チームは、ハッブル宇宙望遠鏡とスピッツァー宇宙望遠鏡による「ケプラー138c」と「ケプラー138d」の観測データを分析し、その研究成果を2022年12月15日、学術誌「ネイチャー・アストロノミー」で発表した。

「『水の惑星』と確信できる惑星を観測したのはこれが初めてだ」

これによると、「ケプラー138c」と「ケプラー138d」の半径はいずれも地球の約1.5倍で、「ケプラー138c」の質量は地球の約2.3倍、「ケプラー138d」の質量は約2.1倍であった。

いずれも水は直接検出されていないが、その大きさと質量を比較した結果、「これらの惑星の体積のかなりの部分は岩石よりも軽く、水素やヘリウムよりも重い物質でできている」と結論づけられている。その有力な候補が水だ。

研究論文の共同著者でモントリオール大学のビョルン・ベネケ教授は「これまで地球よりやや大きい惑星は金属や岩石を主成分とする『地球の拡大版』のようなものだと考えられ、それゆえに『スーパーアース(巨大地球型惑星)』と呼ばれてきた」としながら、「『ケプラー138c』と『ケプラー138d』はその性質が全く異なり、体積の大部分を水で占めている可能性が高いことが示された。長年仮説としてその存在が唱えられてきた『水の惑星』と確信できる惑星を観測したのはこれが初めてだ」と解説する。

>>■■「【画像】水の層は2000km! 地球とケプラー138dの断面比較

表面は氷ではなく大きな水蒸気?

「ケプラー138c」と「ケプラー138d」の体積は地球の3倍以上、質量も2倍以上あるにもかかわらず、密度はいずれも地球よりずっと低い。このことから、これらは太陽系の地球型惑星よりも、その大部分が岩石コアを取り巻く水で構成される「氷衛星」に似ていると考えられる。

「ケプラー138c」と「ケプラー138d」を氷衛星である木星の「エウロパ」や土星の「エンセラダス」を大きくしたものに見立て、恒星にもっと近づけてみると、その表面は氷ではなく大きな水蒸気で覆われることになる。そのため、「ケプラー138c」と「ケプラー138d」では地球のような海が直接地表に存在しないかもしれない。

水蒸気の大気の下に高圧の液体?

研究論文の筆頭著者でモントリオール大学の博士課程に在籍するキャロライン・ピオレ氏は「『ケプラー138c』と『ケプラー138d』の気温は水の沸点を超えている可能性が高く、水蒸気でできた厚く濃い大気が存在すると考えられる。そして、その水蒸気の大気の下だけに、高圧の液体水または『超臨界流体』と呼ばれる高圧下で発生する別の相の水が存在する可能性がある」と考察している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中