最新記事

エネルギー

「何でも燃やせ!」 燃料不足のポーランド、大気汚染が深刻に

2022年12月11日(日)12時25分

子どもの呼吸器系疾患

医師によると、こうした政策転換は既に大気汚染の深刻な地域で呼吸器系の問題を引き起こしている。

チェコとの国境に近いリブニクの州専門病院では気温の下がった11月、子どもの入院が急増したと小児科病棟長のカタルジーナ・ムシオール氏は語った。

エアリーのデータを見ると、氷点下3度になった11月20日夜には、PM2.5の平均濃度が基準の6倍に達している。

「この結果、病棟は子供たちでいっぱいになり、そのうちの90%はスモッグが引き金となって息切れ、呼吸同期ウイルス(RSV)、ぜんそくの悪化、気管支炎、肺炎などの症状が出ていた。中には、生後数週間の赤ちゃんが呼吸困難やRSVを患っているケースもある」とムシオール氏は話す。

「基準を超えることが常態化している。ここ数日はスモッグが激しく、大勢の子どもたちが集中治療を必要としている」

チェコまで調達に

欧州連合(EU)で家庭が暖房に使う石炭の約8割は、ポーランドで消費されている。4月にEU加盟国として初めてロシア産石炭の購入を停止した直後から、ポーランドでは石炭が不足し始めた。

石炭価格は4倍に跳ね上がり、国営の販売会社は配給を開始。国民は冬用の褐炭を確保しようと、夏の間にチェコに車を走らせて同国の卸売業者から購入し始めた。

石炭に手が届かない一部の家庭は、ごみを燃やすという手段に訴えている。クレチュコフスキ教授によると、ごみの方が発がん性の高い毒素を多く含み、地元当局はごみの燃焼をやめさせようと奮闘している。

10月には、ポーランド北部の住民が家具から出たごみを燃やしたとして地元警察から罰金を科せられたが拒否。この住民は、「法と正義」のカチンスキ党首が何でも燃やしていいと言ったではないか、と主張している。裁判は係争中だ。

(Marek Strzelecki記者、 Kuba Stezycki記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

パラマウント、スカイダンスとの協議打ち切り観測 独

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年1月以来の低水準

ワールド

アングル:コロナの次は熱波、比で再びオンライン授業

ワールド

アングル:五輪前に取り締まり強化、人であふれかえる
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前の適切な習慣」とは?

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中