最新記事

極右組織

ドイツでクーデター未遂を起こした極右テロ組織に、「ロシア関与」の疑いが

How Germany's Far-Right Coup Plot Is Linked to Russia

2022年12月9日(金)20時28分
ブレンダン・コール
連行される「帝国市民」のメンバー

警察に連行される極右組織のメンバー(カールスルーエ、12月7日) Heiko Becker-Reuters

<クーデターを計画した極右組織のリーダーは今も一族が城を保有する貴族の家系。組織とロシアとの関係が疑われている>

ドイツで政権転覆を企てたとして極右テロ組織のメンバーら25人が逮捕された問題で、同組織の活動にロシアが関与していた疑いが浮上している。ロシア政府は関係を否定しているが、貴族の家系で一族が現在も城や狩猟用の別邸などを保有している「ハインリッヒ13世」と名乗る男性がリーダーを務めるこの組織は、ロシア側と接触していたとみられている。

■【写真】バート・ローベンシュタインにあるハインリッヒ13世の「居城」

ドイツ当局は12月7日朝、3000人以上を投入して強制捜査を行い、組織のメンバーとみられる25人を逮捕した。逮捕者には、組織のリーダーで「ハインリッヒ13世」を名乗る、71歳の貴族の家系出身の男も含まれている。

当局によると、逮捕されたメンバーらは、リーダーの男を新政府の指導者にすることを計画していた。男はクーデター計画への支持を得るために、ドイツ国内とロシアにおいて、ロシアの代表者と連絡を取ったとされる。

ドイツ連邦検察庁によると、この組織は「ライヒスビュルガー」と呼ばれる極右勢力や「Qアノン」の陰謀論を支持しているという。ライヒスビュルガーは、ドイツの現代の国家体制を否定し、第2次大戦前の国境に従って存在すべきだと主張している。

組織は遅くとも昨年11月までにクーデターを計画し、「ドイツは現在『ディープステート(影の政府)』のメンバーによって統治されていると固く信じている」と検察は説明。組織は、この体制からの解放が米国やロシアを含む「さまざまな国家の政府、情報機関、軍による秘密結社」からなる「同盟」からの介入を約束するものだと考えているという。

「交渉の主な窓口は現在、ロシアである」

新国家秩序について交渉するために暫定的な軍事政権を形成することも計画し、「交渉の主な窓口は現在、ロシアである」と検察庁は明らかにした。

検察庁はまた、逮捕者の中にロシア人の女1人が含まれていると発表した。ドイツの個人情報保護規則に従い「ビタリア・B」と公表されたこの女は、テロ組織とロシア政府高官との接触を仲介した疑いで拘束されたが、接触が成功した「兆候」はなかったという。

過激派について研究するロンドンのシンクタンク「戦略対話研究所」(ISD)の政策・研究担当シニアマネージャー、ヤコブ・グールは、ネオナチやアイデンティタリアン運動など、ドイツに従来から存在する極右勢力は、ロシアへの支持で二分されているとニューズウィークに語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、中国の米企業制裁「強く反対」、台湾への圧力停止

ワールド

中国外相、タイ・カンボジア外相と会談へ 停戦合意を

ワールド

アングル:中国企業、希少木材や高級茶をトークン化 

ワールド

和平望まないなら特別作戦の目標追求、プーチン氏がウ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 3
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌や電池の検査、石油探索、セキュリティゲートなど応用範囲は広大
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 7
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 8
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 9
    【クイズ】世界で最も1人当たりの「ワイン消費量」が…
  • 10
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中