最新記事

韓国

韓国で、ふたたび盛り上がる「日本就職」。日本を目指す若者は日本人が考えるよりはるかに多い

2022年11月17日(木)17時40分
佐々木和義

日本企業が韓国の学生を採用する目的

日本企業が韓国の学生を採用する目的は主に2つある。まず、来年4月に入社する新卒者の日本国内における採用活動はほぼ終わっている。日本で採用に至らなかった人材を海外に求めるというものだ。

次が刺激と変革だ。海外企業に就職する外国人は、自らの意見を積極的に言う傾向があり、なかでも欧米系よりアジア系の外国人社員が、同期入社の社員に加えて既存社員にも刺激となることが多いという。人材の国籍はこだわらないが、韓国は日本語が堪能な学生が多いことが決め手となっている。

韓国最大の求人サイト「サラムイン」が調べた22年に大企業に就職した新卒者の平均年俸は5356万ウォン (約568万円)で、中小企業は2881万ウォン(約305万円)だった。韓国では出身大学がその後の人生を左右する例が少なくない。

国立のソウル大学と私立の名門、高麗(コリョ)大学、延世(ヨンセ)大学はSKYと呼ばれ、卒業生は韓国企業に就職すると高い年俸を得られるが、SKY以外の卒業生の大企業への就職は難しい。

ソウル大出身者との打ち合わせ中や食事中に電話が入ると、通話相手を「ソウル大の同期」、「ソウル大の先輩」、「ソウル大の後輩」と紹介し、「ソウル大の先輩と会う予定」と話すなど、ソウル大出身者は卒業してから何十年経っても「ソウル大」という枕言葉を付けるし、仕事に関する情報を共有する。ソウル大以外の出身者は「大学の先輩」などと言い、大学名を付けることはない。

「日本のアニメや漫画を原語で楽しみたいから」

筆者は2019年4月にSKYではないある大学教授の依頼で日本就職講座の学生に講義を行った際、日本語を学んだ理由と日本企業に就職したい理由を尋ねてみた。日本語を勉強した理由はほとんどの学生が日本のアニメや漫画を原語で楽しみたいからと答え、日本就職は、半数以上の学生が韓国で就職したいが良い条件での就職が難しいので海外就職を考えていると回答した。

海外就職は日本に限らないが、日本は韓国から近いことから家族の賛同を得やすいし、そもそも日本語を勉強した彼らは日本以外の海外就職は考えられない。

韓国企業はSKY出身者を優遇するが、日本企業は新卒者を大学や国籍で区別することはない。SKYだろうがSKYでなかろうが、また日本の大学を卒業した新卒者もスタートラインは同一だ。日本就職はSKYに入学できなかった学生が人生をリセットする機会にもなる。

今回の面接会に際して、マイナビコリアは大学等を訪問し、日本企業の特徴や日本で働く心得などを説明した上で応募を受け付けたという。

今回、面接を受けた学生のうち何人が、来春、日本企業に就職するのか現時点では不明だが、筆者は日頃から韓国の若者は素直な人が多いと感じている。韓国の企業風土に染まっていない若者に期待したい。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

MAGA派グリーン議員、トランプ氏発言で危険にさら

ビジネス

テスラ、米生産で中国製部品の排除をサプライヤーに要

ビジネス

米政権文書、アリババが中国軍に技術協力と指摘=FT

ビジネス

エヌビディア決算にハイテク株の手掛かり求める展開に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 2
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 3
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 4
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 7
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中