最新記事

中国

習近平に仕える6人の「無力な男たち」...それでも、彼らであるべき理由があった

Xi’s Men

2022年11月1日(火)19時28分
ジェームズ・パーマー(フォーリン・ポリシー誌副編集長)

221108p26_CJN_03.jpg

7人体制維持の常務委員会の習近平、李強、趙楽際、王滬寧、蔡奇、丁薛祥、李希 AP/AFLO

■王滬寧(ワン・フーニン、序列4位)

おそらく最も興味深い存在だ。趙と同様に前期からの留任組で、政治理論の専門家として、党のイデオロギーを明確化し実践に移す「中央政策研究室」を率いてきた。

一方で「中国のキッシンジャー」と呼ばれたこともあり、胡錦濤政権でも重用された。当時の彼は、弱体化した西側諸国に代わって中国が台頭するという中華民族主義の主張を掲げていた。

1991年の著書『美国反対美国(米国が米国に反対する)』ではアメリカの衰亡を予測したが、この10年ほどは一転して、中国はアメリカとの文化戦争に負けている、中国の若者が今以上にアメリカ化しないように取り締まることが必要だと力説してきた。

結果として国内の若者を外界から隔離することには(ある程度まで)成功したように見えるが、中国文化の輸出はうまくいっていない。

アメリカに追い付き、追い越せ。そういう王の主張にも、経済成長率8%の時代なら一定のリアリティーがあった。しかし今の成長率は2.5%に向けて下がり続けている。それでも習近平の意向に背くことはできないから、王は従来の主張を頑強に維持するしかない。

そうなると、国内向けの世論工作では露骨に反米的な世界観が強調されることになる。そして現場の外交官たちは、点数を稼ぐために攻撃的な「戦狼外交」を続けることにもなる。

■蔡奇(ツァイ・チー、序列5位)

習にとっては政界でいちばん付き合いが長い友人だ。1985年に福建省の党組織で出会って以来ずっと共に働いてきた仲。90年代に入ってからは習が上司の立場にあるが、親密な関係を保っている。習の部下として多くのポストを渡り歩き、党の中核たる習の役割を盛り上げることに邁進してきた追従者だといえる。

直近の職務は北京市党委書記で、習が自身の近くに置くための人事のように見えた。首都の運営に当たっては、北京市内の環境浄化を名目として貧困層の暮らしに大打撃を与えた。2017年冬には強制退去の対象となった数十万人が冷たい路上でホームレス生活を強いられ、当局が方針を撤回するという面倒な事態を招いたが、全ては党中央の方針に沿ったこと。最終的には冬季五輪を成功裏に開催して称賛された。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国最高裁、李在明氏の無罪判決破棄 大統領選出馬資

ワールド

イスラエルがシリア攻撃、少数派保護理由に 首都近郊

ワールド

学生が米テキサス大学と州知事を提訴、ガザ抗議デモ巡

ワールド

豪住宅価格、4月は過去最高 関税リスクで販売は減少
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 10
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中