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ウクライナ戦争

ウクライナと心中覚悟のプーチン──なぜ私たちは核戦争のリスクを軽く見たがるのか?

Before a Nuclear War Begins

2022年10月19日(水)12時58分
アリエル・レビテ(カーネギー国際平和財団)、ジョージ・パーコビッチ(カーネギー国際平和財団)

ロシア軍を全面撤退に追い込み、どうあがいてもプーチンが勝利を宣言できないようにすべきだという議論もある。だが戦略的に見れば、既にプーチンは負けている。

NATOの東方拡大は続き、フィンランドやスウェーデンまで抱き込む勢いだし、誰もが想像だにしなかったほど力強くウクライナを支援している。ロシアの軍隊は敗走し、面目は丸つぶれだ。

ロシア経済は縮小し、逃げ出した資本や技術は(ロシア政府の顔触れが変わらない限り)戻ってこない。ロシア国民(特に有能な若者たち)はプーチンに愛想を尽かし、あるいは国外へ脱出した。どう見てもプーチンの負けだ。

勢いに乗るウクライナ人やその支援者たちが、この段階での停戦を受け入れ難いと思うのは当然だ。プーチンのロシアが少しでも得をするような解決策に正義はない。それは誰もが承知している。

しかし今は、先の大戦の頃とは状況が違う。あのときはドイツと日本を完全にたたきのめし、民主国家に生まれ変わらせることができた。どちらにも、核兵器はなかったからだ。しかし今のロシアにはある。

追い詰められたプーチンが核のボタンを押す前に、ウクライナ軍が全ての占領地からロシア勢を追い出せるのならいい。それが無理なら直ちに停戦交渉に入るべきだ。それがウクライナとヨーロッパ、アメリカ、そして世界中の人のためになる。核戦争が始まってからでは遅い。

From Foreign Policy Magazine

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