<クリミア半島の奥深くまで及んできたウクライナ軍の長距離攻撃に恐れをなして、ウクライナの海岸に近づくこともできない黒海艦隊は、もはや「役立たずだ」と専門家>

英国防省の報告によれば、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、クリミア半島を拠点としてきた黒海艦隊をロシア南部に移動せざるをえなくなっている。

英国防省は、毎日更新しているウクライナ戦争の情勢分析で、ウクライナ軍がクリミア半島の奥深くまで攻撃してきたことを受け、ロシアの黒海艦隊司令部が「キロ型潜水艦」を母港のセバストポリから、ロシア南部のノボロシースクに移動させているのはほぼ確実だ、と述べている。

「ウクライナ軍の長距離攻撃能力が向上し、(黒海艦隊にとっての)安全保障上の脅威レベルが変化したためだと見られる」

黒海艦隊を脅かしたウクライナ軍のクリミア攻撃の具体例として、英国防省は、この2カ月間に起きた黒海艦隊本部および主要な海軍飛行場への攻撃に言及している。

侵攻前は黒海の支配者だった

プーチンが2014年にクリミア半島を併合した「動機」の一つは黒海艦隊にとって安全な拠点を確保することだったが、せっかく手に入れたその拠点は失われつつある可能性が高い、と英国防省は分析する。

英国防省によるこの評価は、元米欧州軍司令官のベン・ホッジスの発言を受けたものだ。ホッジスは9月19日に公開された動画で、ロシア軍はウクライナの陸海で苦戦しており、黒海艦隊は「全く役立たず」になっていると述べた。

黒海艦隊の惨状を見る

プーチンのウクライナ侵攻以前には、黒海艦隊は「基本的に黒海全体を支配していた」と、ホッジスは言う。「だがこの半年間で、ロシア海軍もロシア陸軍と弱さでが変わらないという現実をわれわれは目の当たりにしてきた」

ホッジスは、7億5000万ドルの価値があると推定される黒海艦隊の旗艦「モスクワ」の沈没に加えて、黒海で撃沈した複数のロシア艦船に言及した。

黒海艦隊は「ウクライナの海岸に近づくことを恐れ」、クリミア半島の陰に身を隠している、とホッジスは述べている。

「黒海艦隊は、潜水艦を除けば、全く役に立っていないと思う。戦いに参加していない」とホッジスは続ける。「ウクライナ軍はクリミアに迫っており、セバストポリも間もなくハイマース(高軌道ロケット砲システム)など長距離砲の射程に入る。そうなれば、黒海艦隊は手も足も出ない」

ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領は8月、ロシアに奪われた領土を奪還するための大規模な反撃の一環として、クリミア半島を取り戻すと宣言していた。

(翻訳:ガリレオ)

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