最新記事

経済制裁

ロシア経済制裁の効力──企業による「自主制裁」が効いていたという結果

TRADING WITH THE ENEMY

2022年8月24日(水)13時49分
デービッド・ブレナン(本誌記者)

220830p42_RSS_02v2.jpg

石油大手シェルは3月に撤退を表明。写真の潤滑油工場も売却されることに ANDREY RUDAKOVーBLOOMBERG/GETTY IMAGES

ロシアの「経済要塞化」は失敗

6月上旬、各国の外交、政界、実業界のリーダーが集う「コペンハーゲン民主主義サミット」が、今年も民主主義同盟財団の主催で開かれた。

旗振り役は同財団の会長で、NATO(北大西洋条約機構)前事務総長のアナス・フォー・ラスムセン。民主主義国家間の連携と独裁主義の台頭へ抵抗を促すことを目的とする。

サミットではサムレンの司会で「敵と取引するには」と題したパネルディスカッションが開かれた。

この席でイギリスの多国籍企業セントラルニックのベン・クロフォードCEOは、ロシアのような独裁国家からの突然の撤退には思わぬマイナス面もあり得ると指摘した。セントラルニックは一流の組織や企業のドメイン名を管理している。

ロシアと絶縁すれば「知的財産であるドメイン名がサイバー犯罪者や偽造業者、場合によってはもっと悪質なやからの手に渡るかもしれない」と、クロフォードは述べた。「知的財産を守ることが最大の責務だと、私たちは認識するに至った。ロシアと取引を続けるとしたら、それはもっと重要な目的のためだ」

グーグルでグローバルアフェア担当社長を務めるケント・ウォーカーは本誌に対し、ロシアでのプレゼンスを維持したほうがよい結果を招くというのが社の考えだと語った。

グーグルはロシアで有料サービスを全て停止した。ロシアのユーザーは現在、グーグル・プレイでアプリを購入したりサブスクリプションサービスを利用したりすることはできない。だが購入あるいはダウンロード済みのコンテンツは利用できるし、無料アプリにもアクセスできる。

「事実と真実を明るみに出すことがグーグルの貢献であり、可能な限りその貢献を続けていく」と、ウォーカーは述べた。「わが社は上質な情報源の提供を心掛けており、グーグル検索がフェイクニュースの解毒剤になることを望んでいる」

一方、ディスカッションに参加したドイツ産業連盟(BDI)のウォルフガング・ニーダーマルク理事の見解は異なる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:メダリストも導入、広がる糖尿病用血糖モニ

ビジネス

アングル:中国で安売り店が躍進、近づく「日本型デフ

ビジネス

NY外為市場=ユーロ/ドル、週間で2カ月ぶり大幅安

ワールド

仏大統領「深刻な局面」と警告、総選挙で極右勝利なら
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:姿なき侵略者 中国
特集:姿なき侵略者 中国
2024年6月18日号(6/11発売)

アメリカの「裏庭」カリブ海のリゾート地やニューヨークで影響力工作を拡大する中国の深謀遠慮

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    この「自爆ドローンでロシア軍撃破の瞬間」映像が「珍しい」とされる理由

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    森に潜んだロシア部隊を発見、HIMARS精密攻撃で大爆発...死者60人以上の攻撃「映像」ウクライナ公開

  • 4

    米モデル、娘との水着ツーショット写真が「性的すぎ…

  • 5

    メーガン妃「ご愛用ブランド」がイギリス王室で愛さ…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名…

  • 8

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    カカオに新たな可能性、血糖値の上昇を抑える「チョ…

  • 1

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 2

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 3

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 4

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...…

  • 5

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名…

  • 6

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「…

  • 7

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 8

    カカオに新たな可能性、血糖値の上昇を抑える「チョ…

  • 9

    「クマvsワニ」を川で激撮...衝撃の対決シーンも一瞬…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が妊娠発表後、初めて公の場…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 4

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…

  • 5

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 6

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 7

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 9

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

  • 10

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中