最新記事

経済制裁

ロシア経済制裁の効力──企業による「自主制裁」が効いていたという結果

TRADING WITH THE ENEMY

2022年8月24日(水)13時49分
デービッド・ブレナン(本誌記者)

220830p42_RSSchart_01.jpg

ソネンフェルドが所長を務めるエール大学の経営者リーダーシップ研究所は1300社以上を対象に、ロシアからの撤退度を6段階で評価。これまでのところ、300社以上が完全に撤退し、約170社がロシア事業の一部を「縮小」した。

最も多かったのが、事業は停止したが再開する選択肢も残した「一時停止」で500社近く。新規投資はしないが既存事業は続けている「様子見」の企業は160社だった。

従来の事業をそのまま維持し、撤退や規模縮小の計画も明らかにしていない「継続」に該当した企業は240社だった。この中には外食チェーンのハードロックカフェや医療機器のメドトロニックといったアメリカ企業が含まれる。

ソネンフェルドによれば、対応が特に早かったのは専門的なサービスを提供する企業や石油大手、テクノロジー大手だ。

「この3つのジャンルが最初に動いたことにはびっくりした。奇妙なことに、ファッションや香水、消費財、カジュアルダイニング、果ては一般大衆の感情を読むことを得意としているはずの広告代理店は驚くほど出遅れた」

5月に発表した論文でソネンフェルドらは、ロシアからの撤退は道義的に正しいだけでなく、ビジネス面でも利点があると主張した。撤退して以降、そのコストを埋め合わせるに足るほど株価が上昇した企業がある一方で、事業継続を選んだ企業の株価は低迷しているというのだ。

特に「ロシア事業の売却を発表したハイネケン、シェル、エクソンモービル、カールスバーグ、アンハイザー・ブッシュ・インベブ、ソシエテ・ジェネラルの6社では、売却資産の価値の総計をはるかに上回る富が生み出された。さらに驚くべきは、6社の株価はいずれもロシアからの撤退を発表した後に上昇したが、多くの場合、発表の前には株価は急落していた」と言う。

イギリス王立国際問題研究所の客員研究員ティモシー・アッシュに言わせれば、ロシア事業を継続したところで先はない。「見通しは暗い。よほど愚かでなければ、地政学的な話が根本的に変わったことは分かるはず。出口戦略をどうするかだけの話だと私は思う」とアッシュは言う。

だが経営に実際に携わっている人々にとっては、話はそれほど単純ではない。スウェーデンの通信大手テリアはロシアなど権威主義体制の国々でも事業を行っている。テリアの上級副社長、レイチェル・サムレンはそうした国々での事業は「やめればいいという話ではない。非常に複雑な問題がある」と言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米政権が内航海運に外国船の一時的利用容認、エネルギ

ビジネス

FRB、2会合連続据え置き パウエル議長「中東情勢

ビジネス

米国株式市場=急反落、ダウ768ドル安 FRBは金

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、FOMC据え置き受け下落分
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 2
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 3
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 4
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 5
    モジタバの最高指導者就任は国民への「最大の侮辱」.…
  • 6
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 7
    ガソリン価格はどこまで上がるのか? 専門家が語る…
  • 8
    観客が撮影...ティモシー・シャラメが「アカデミー賞…
  • 9
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 10
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったの…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 3
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 6
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 9
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 10
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中