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FBIはトランプの金庫の中まで調べた──機密文書、秘密口座、トランプの遺言書も!?

Just the Beginning

2022年8月15日(月)17時50分
マーティン・J・シール(米内国歳入庁犯罪捜査部門・元特別捜査官)

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トランプ邸が捜索された翌日、家の前には支持者たちが駆け付けた EVA MARIE UZCATEGUI-BLOOMBERG/GETTY IMAGES

もっともマールアラーゴの使用人も、機密文書の存在と保管場所を裏付ける証人として役に立つ可能性はある。あるいはトランプ自らが機密文書をマールアラーゴに持ち帰ったことを認め、返還を拒否した可能性も考えられる。

ただし可能性が高いのは、トランプに忠実な側近と見なされていた人物が、今は重要な「内部証人」になっているということだ。

それは最近マールアラーゴで、犯罪をうかがわせる機密文書の存在を確認することができた人物でなくてはならない。しかも、信頼の置ける人物であることが条件だ。

いまトランプは怒りに震えながら、その人物が誰かを突き止めようとしているだろう。

だが、なぜFBIはトランプ本人を召喚しないのか。それについては、宣誓供述書に言及があるはずだ。

捜索令状の執行は、証拠を入手する方法がほかにない場合のみに使われる特別な捜査手法だ。宣誓供述人は、証拠入手のためにそれまでどのような捜査を行ったか、なぜ捜索令状の執行が残された唯一の手段なのかを説明しなくてはならない。

言い換えれば、捜査当局は既に証拠提出の要請や、証人の召喚を行っているのだが、対象者がそれに応じなかったのだろう。

トランプが証拠を提出しなかったか、あるいは証拠の存在自体を隠したことがあり、宣誓供述書にその旨が明記されている可能性は十分に考えられる。

証拠を隠したり、要求された文書の提出を拒否することは、さらなる連邦法違反になる可能性が高い。そうなると、別の問題が浮上する。

捜索令状の宣誓供述書は、捜査中の連邦法違反について具体的に明記しなくてはならない。だが令状が承認・執行されて別の連邦法違反の証拠が見つかれば、その証拠は宣誓供述書に記されている違反行為だけではなく、別の犯罪の訴追にも使うことができる。

金庫の中は秘密だらけ

つまりFBIがマールアラーゴで機密文書を捜索している間に、公務執行妨害の証拠や、昨年1月6日に起きた連邦議会議事堂襲撃事件への共謀容疑を裏付ける証拠が見つかれば、それも裁判で証拠として使える可能性がある。

トランプが「魔女狩りだ」などと叫んでも、全く関係ない。政府にはその証拠を使う権利がある(もちろんトランプのほうには資金を募って法廷闘争に備える権利があり、それは既に始まっている)。

マールアラーゴの家宅捜索について、トランプは声明を出し、金庫の中まで調べられたことに不快感を示した。しかし連邦捜査官が捜索令状を執行する際に、金庫を調べるのは全く適切な行為だ。

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