最新記事

米政治

FBIはトランプの金庫の中まで調べた──機密文書、秘密口座、トランプの遺言書も!?

Just the Beginning

2022年8月15日(月)17時50分
マーティン・J・シール(米内国歳入庁犯罪捜査部門・元特別捜査官)
トランプ

家宅捜索の翌日、ニューヨーク市の自宅トランプ・タワーに到着したトランプ DAVID DEE DELGADO-REUTERS

<フロリダ州のトランプ私邸捜索で開くパンドラの箱。これは、前大統領にして次期大統領候補への大追及の始まりにすぎない>

ドナルド・トランプ前米大統領のフロリダ州にある私邸「マールアラーゴ」に8月8日、FBIが家宅捜索に入った。トランプがホワイトハウスから違法に持ち出した機密文書が、保管されている可能性があるという理由からだ。

前大統領にして、もしかすると次期大統領になるかもしれない人物の私邸に、FBIが家宅捜索を行うのは異例の事態だ。今回の家宅捜索とそれが行われた理由の持つ意味合いは、とてつもなく大きい。

捜索令状には、捜索を行う「相当な理由」である事実を明記した法執行官による宣誓供述書が含まれる。これが判事に提出されて執行の許諾を得て、ようやく捜索令状が発付される。

宣誓供述書で重要なのは、捜索令状の対象が連邦法に違反したことを示す証拠の概要だ。宣誓供述人は、実際に行われたとみられる違法行為のあらましを説明し、捜索が予定される場所に存在すると思われる証拠を具体的に述べなくてはならない。

今回の場合に証拠となるのは、トランプが連邦法に違反して持ち出したとみられる機密文書であり、それがマールアラーゴにあると考えられた。FBIはトランプの金庫の中まで調べた。

さらに法執行当局は宣誓供述書に、対象者が違反したと考える連邦法を具体的に記さなくてはならない。今回の場合は、機密文書の扱いに関する連邦法違反が問題となっている可能性が高い。

宣誓供述人である連邦捜査官は判事に対し、犯罪が行われた証拠が見つかると信じる「相当な理由」を具体的に述べなくてはならず、この理由は「新しい」ものでなくてはならない。つまり今回の証拠となる機密文書は最近、目撃された可能性が高い。

では、誰がそれを目撃したのか。FBIに情報を提供したのは誰なのか。

今回の家宅捜索を執行するためにFBIは、不適切な取り扱いがなされた機密文書を最近目撃した人物を、情報源として確保している可能性が高い。

つまり問題の文書が最近、本来あるべき国立公文書館ではなく、マールアラーゴにあるのを見た人物がいるということだ。

側近が重要な証人に?

この情報源は、トランプの側近の中にいる可能性が高い。

マールアラーゴの使用人も機密文書を目にしているかもしれないが、それを機密文書だと認識できる可能性は低いだろう。家宅捜索について判事の許諾を得る上で、彼らの目撃証言では十分な説得力がない。

しかし、ホワイトハウスでトランプに仕え、機密情報にも触れていた側近なら、極めて説得力のある情報源になり得る。

【関連記事】日本人が知らないトランプの現在の力

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、捕虜交換完了後に和平案を提示する用意=外相

ワールド

トランプ氏、日鉄のUSスチール買収承認の意向 「計

ワールド

アングル:AIで信号サイクル最適化、ブエノスアイレ

ビジネス

アングル:グローバル企業、トランプ関税の痛み分散 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:関税の歴史学
特集:関税の歴史学
2025年5月27日号(5/20発売)

アメリカ史が語る「関税と恐慌」の連鎖反応。歴史の教訓にトランプと世界が学ぶとき

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドローン母船」の残念な欠点
  • 2
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界の生産量の70%以上を占める国はどこ?
  • 3
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非礼すぎる」行為の映像...「誰だって怒る」と批判の声
  • 4
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 5
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワ…
  • 6
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 7
    空と海から「挟み撃ち」の瞬間...ウクライナが黒海の…
  • 8
    「娘の眼球がこぼれ落ちてる!」見守りカメラに映っ…
  • 9
    【クイズ】PCやスマホに不可欠...「リチウム」の埋蔵…
  • 10
    備蓄米を放出しても「コメの値段は下がらない」 国内…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドローン母船」の残念な欠点
  • 4
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 5
    コストコが「あの商品」に販売制限...消費者が殺到し…
  • 6
    ワニの囲いに侵入した男性...「猛攻」を受け「絶叫」…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「太陽光発電」を導入している国…
  • 8
    「空腹」こそが「未来の医療」になる時代へ...「ファ…
  • 9
    人間に近い汎用人工知能(AGI)で中国は米国を既に抜…
  • 10
    中ロが触手を伸ばす米領アリューシャン列島で「次の…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
  • 5
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 6
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中