最新記事

韓国政治

韓国ユン大統領、就任3カ月で支持率30%割り込む不人気 検察改革への横槍や与党内紛に国民うんざり

2022年8月1日(月)18時50分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

文政権にとって、強大な権力をもつ検察から警察へ権限を移譲させ「検察による直接捜査の段階的廃止」させることは、政権の重要課題の一つだった。そうした検察改革の先頭にたつ者として選ばれたのが、日本でも有名になった曹国(チョ・グク)法相だ。ところが曹国は娘の不正入学疑惑などのスキャンダルが次々と明るみになり、法相を辞任。その際に曹国を起訴した検察のトップこそ当時の尹錫悦検察総長だ。

こういった経緯から文政権と尹錫悦は次第に対立するようになり、尹は2021年3月に辞任を表明。さらに3カ月後には曹国をめぐるスキャンダルや不動産価格対策の失敗など文政権に失望した国民の声に推される形で大統領選への立候補を表明した。

警察の独立性すら奪いかねない組織改編

今回、尹政権が設置を決めた警察局は警察と関連した重要政策や法令の審議、警察幹部の任用、自治体参加の自治警察の支援などの業務を担うとされる。警察局の設置について韓悳洙(ハン・ドクス)首相は「前政権では大統領府の民情首席秘書官室が管掌していた警察庁に対する実質的な統率を、行政安全部の長官がより民主的で透明に行うためのものだ」と説明している。だが、実態としては文政権による「検察による直接捜査の段階的廃止」によって検察が公訴するだけの役所になることにストップをかけ、政権が警察を監督するということで警察の独立性すら奪いかねない組織改編との指摘が出ている。

当然ながら念願の捜査権の拡大を絶たれた警察側は反発を強め、政府との対立が深まっている。7月25日には約650人いる全国の警察署長の半分を超える357人が参加した会議が開かれ、警察局設置を見送るよう求めた。ところがこうした動きに警察庁は、会議を主導した蔚山中部警察署署長に自宅待機を発令するなど参加者の集団懲戒を示唆。尹大統領も「政府が憲法と法律にもとづいて進める政策と組織改編に警察が集団で反発することは重大な綱紀の乱れになり得る」と批判。警察側は一層の反発を強めているのが現状だ。

葬儀用の花輪

警察局設置に反対する警察側は、警察庁前に『国民の警察は死んだ』というメッセージの葬儀用花輪を設置し抗議の意思を示した。JTBC / YouTube

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 

ビジネス

米地銀リパブリック・ファーストが公的管理下に、同業
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ」「ゲーム」「へのへのもへじ」

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    走行中なのに運転手を殴打、バスは建物に衝突...衝撃…

  • 7

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 8

    ロシア黒海艦隊「最古の艦艇」がウクライナ軍による…

  • 9

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中