最新記事

韓国

統一教会は、韓国ではカルト宗教であり小財閥としても認知されている

2022年7月25日(月)17時10分
佐々木和義

統一教会の合同結婚式 (2014年) REUTERS/Kim Hong-Ji

<統一教は日本ではかつて行った合同結婚や霊感商法で知られるが、韓国ではカルト教であることに加えて小財閥としても認知されている......>

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の元幹部、郭錠煥(クァク・ジョンファン)元世界会長が7月19日、安倍晋三元総理の銃撃事件に関する会見を行った。

郭氏は「統一教会で最も長く最高位の指導者に就いていた。安倍元首相の死に責任がないとは思っていない。心からおわび申し上げる」と謝罪し、「教団の活動が本来あるべき道から完全に外れたことで起きた」と教団を批判した。

統一教と自民党の関係については「(統一教を創設した)文鮮明総裁は日本の岸信介元首相と親しく、安倍元首相の父親である安倍晋太郎元外相とも親しかった」「岸元首相や安倍元首相との関係は宗教的・人間的・政治的関係とは全く違った。日本や東南アジアで激化していた左傾化運動に困っていた日本政府が文総裁の勝共運動に感化を受けた」と説明した。

統一教会に対する恨みが襲撃につながった

安倍元総理を銃撃した山上徹也容疑者は、安倍晋三元総理を襲撃して統一教に非難が集中することを狙ったと供述したと報じられた。山上容疑者の母親は統一教に入信、急逝した夫の遺産や生命保険金などおよそ1億円を寄付したという。2014年に破産宣告を受けており、山上家庭を壊した統一教会に対する恨みが安倍元総理への襲撃に繋がったとされる。

統一教は1954年、文鮮明が世界キリスト教統一神霊教会として創設。名称を統一教に変えた後、2013年、世界平和統一家庭連合に改称した。統一教または統一教会と呼ばれているが、キリスト教団体は統一協会と呼んでいる。日本では1958年から活動を開始して、1964年に宗教法人の認可を受けた。

文鮮明は1968年、反共産主義政治団体「国際勝共連合」を日本で設立。マルクス・レーニン主義者の運動に悩まされていた岸信介ら日本の政治家と交流を持つきっかけになったとみられるが、統一教は文鮮明が岸信介と握手した写真や安倍晋三元総理の写真を教団の広報に利用した。

「資産規模は推測できない天文学的な水準」

統一教は日本ではかつて行った合同結婚や霊感商法で知られるが、韓国ではカルト教であることに加えて小財閥としても認知されている。2012年、文鮮明が亡くなると教団と文鮮明の資産が注目を浴びた。

2012年9月3日付の韓国ヘラルド経済によると、教団の表向きの資産は1兆7361億ウォンで、系列会社は世界日報、龍平リゾート、食品会社の一和、霊感商法の壺を作った一信石材など15社だが、統一教対策協議会が調べた関連会社は50社以上で総資産は6兆ウォンを超えていた。

大規模開発も行っており、全羅南道の麗水市に1兆ウォンを投資してリゾート開発を行ったほか、佐賀県の唐津から対馬を経て韓国の巨済島に至る日韓海底トンネル構想にも着手した。

不動産資産も多い。文鮮明の居宅はソウル龍山区漢南洞(ハンナムドン)の高級住宅で、同地域ではサムスン会長宅に次ぐ豪邸だ。

また、汝矣島世界本部予定地や子ども芸術団本部、芸術学校、世界日報など、文鮮明が亡くなった時点の不動産資産は5000億ウォンを超えていた。統一教対策協議会の事務総長が「統一教の正確な資産規模は推測できない天文学的な水準」と述べたと韓国ヘラルド経済は伝えている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米ウ代表団、今週会合 和平の枠組み取りまとめ=ゼレ

ビジネス

ECB、利下げ巡る議論は時期尚早=ラトビア中銀総裁

ワールド

香港大規模火災の死者83人に、鎮火は28日夜の見通

ワールド

プーチン氏、和平案「合意の基礎に」 ウ軍撤退なけれ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果のある「食べ物」はどれ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 9
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 10
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中