最新記事

英語

寝たふりする私の横で、私の英語を真似して笑うネイティブたち...その真意に後から気付いた

2022年7月1日(金)18時28分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

驚いたことに、文法のテストで私はいつも上位だった。度の強いメガネをかけ、厳しくて皮肉屋の先生、ミセス・イーヴンソンがよく言った。

Look at Mitsy.
ミッツィを見てごらんなさい。

「英語をうまく話せないのに、文法のテストは満点近いんですよ」

ほめられているのか何なのか、微妙だが、先生もクラスメートもびっくりしている。

前置詞や冠詞の使い方がわかっていないアメリカ人が多いことに、私は逆に驚いた。文法の知識は、かなりいい加減だ。

文法があやふやでも、文脈で意味は通じることが多い。私たち日本人も、日本語の文法がきちんとわかっているとは限らない。「食べれる」の「ら」抜きのように。

でも、英語の環境で生まれ育っていない私たちにとって、文法はゲームのルールのようなものだ。ルールを知っていれば、それにしたがって表現を増やしていける。応用がきき、会話の幅が広がる。

留学中、私は日記を書いていた。最初は日本語に英語が交じる程度だったのが、1か月もするとすべて英語になった。こなれない表現もあるけれど、文法はほぼ正確だ。

英語の授業でミステリー小説を読んだ時、誰も犯人を当てることができなかった。私が恐る恐る手をあげ、犯人を当てた。私の読み書きの力は、それまでに受けた日本の英語教育が基礎にあったから、ここまで伸びた。

慣れないうちは耳から入る英語が雑音に聞こえたし、ボキャブラリーが足りなかったものの、文法はしっかり頭に入っていたから、混乱はなかった。

中学・高校の6年間の英語学習、詰め込みの受験英語は、大いに役に立っていた。

授業中に私が何より驚いたのは、隣の男子生徒にこう聞かれた時だ。

Hey, how do you spell absent?
ねえ、absent のつづり、教えて。

冗談かと思ったら、本気で私の答えを待っていた。

私の英語をみんなが笑った

Forget it.
もういいから。今、言ったことは、忘れて。

高校留学中、何よりつらい友人のひと言が、これだった。

英語がわからなくて、What do you mean?(どういう意味?)と聞くと、そう返ってくる。英語圏で生活しながら、英語が理解できなければ、すべてに自信をなくす。

一対一で話している時は説明し直してくれることも多いけれど、グループで話が盛り上がっている時に、ついていけない私にいちいち説明するのは面倒だし、場もしらける。雰囲気を壊したくないので、最初のうちはそう言われると、黙ってしまった。

留学して2か月くらいたった頃、アメリカ人の友人4、5人とピザを食べに、車で30分ほどの町に向かっていた。後部座席で私が眠っている、と思ったのだろう。友人たちが、私の英語について話し始めた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

林氏が政策公表、物価上昇緩やかにし1%程度の実質賃

ワールド

米民主党議員、環境保護局に排出ガス規制撤廃の中止要

ビジネス

アングル:FRB「完全なギアチェンジ」と市場は見な

ビジネス

野村、年内あと2回の米利下げ予想 FOMC受け10
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中