最新記事

中国経済

2030年代に世界一の経済大国になるも、「豊かな経済大国」にはなれない中国

CAN CHINA OVERTAKE THE U.S. ECONOMICALLY?

2022年7月22日(金)07時43分
ミンシン・ペイ(本誌コラムニスト、クレアモント・マッケンナ大学教授)

これからの10年で習が全てをうまくやり遂げて(それは無理そうだが)、中国が年5%以上の成長を達成して30年にアメリカの経済規模を上回ったとしても、人口動態の問題に足を引っ張られて、トップの座を維持することは難しいだろう。

国連の予測によると、中国の人口動態は30年代に厳しい状況に直面する。中国の人口の年齢中央値は、20年は38.4歳でアメリカ(38.3歳)とほぼ同じだ。しかし、30年には中国の中央値は42.6歳になり、05年の日本(43.0歳)とほぼ同じだが、30年のアメリカ(39.9歳)よりかなり高くなる。

35年に中国の中央値は45歳に達するのに対し、アメリカは40.9歳。中国の45歳は10年の日本(44.7歳)に近い。そして、40年に中国は46.3歳になる見込みで、15年の日本(46.4歳)とほぼ同じだが、40年のアメリカ(41.6歳)より4歳以上高くなる。

過去30年間の日本を考えると、人口動態は国の経済的な運命を決める。高齢化社会は、介護のための資源をより多く必要とする。貯蓄率は低下し、労働コストは上昇して、経済競争力が損なわれる。

30年の中国の人口動態が05年の日本と同じようになった場合、経済成長を維持する上で日本以上に困難な問題に直面する可能性がある。日本は高齢化社会に突入した後も豊かな先進国だった。05年の日本の1人当たり国民所得は3万7800ドル。

それに対し中国は、先述のとおり、今後10年間にわたり年平均5%の成長を維持できたとしても、31年の1人当たりの国民所得は1万9700ドルだ。最善のシナリオでも、中国が10年後に高齢化社会に突入する頃は、豊かさは05年の日本の半分程度でしかないだろう。

従って、仮に中国があらゆる困難を乗り越えて、10年後にアメリカを抜いて世界最大の経済大国になったとしても、社会の急速な高齢化によって経済成長は大幅に鈍化するだろう。そして、若年層が多いアメリカに世界経済第1位の座を再び明け渡すことになる。

とはいえ、油断は禁物だ。30年代初頭に30兆ドル近い経済規模で「世界第2位」の経済大国となった中国が、手ごわい超大国であることに変わりはない。

ニューズウィーク日本版 世界が尊敬する日本の小説36
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年9月16日/23日号(9月9日発売)は「世界が尊敬する日本の小説36」特集。優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮の金与正氏、日米韓の軍事訓練けん制 対抗措置

ワールド

ネパール、暫定首相にカルキ元最高裁長官 来年3月総

ワールド

ルイジアナ州に州兵1000人派遣か、国防総省が計画

ワールド

中国軍、南シナ海巡りフィリピンけん制 日米比が合同
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 6
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で最も「火山が多い国」はどこ?
  • 9
    村上春樹は「どの作品」から読むのが正解? 最初の1…
  • 10
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 8
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中