ドローンなど備品調達から洗濯まで 補給難のロシア軍を支える国境の町バルイキ
「ルスラナ」というハンドルネームを使う管理者は、4月12日に「警察特殊部隊向けに、このタイプのドローンを少なくとも3機、16日までに緊急に必要だ」とチャットに投稿している。「多くのロシア軍兵士の命を救うために、どうしても必要だ」
投稿にはオンライン小売事業者のページのスクリーンショットが添付されている。事業者によれば、中国のドローン大手DJIテクノロジーが製造するクワッドコプター(4ローターのヘリコプター)だという。その時点で事業者が表示していた価格は9万2990ルーブル(約21万5000円)だった。
本記事のためにコメントを求めたところ、「ルスラナ」を名乗る人物は、軍への装備供給についての質問に回答することを拒否した。理由は、ロイターの所有者が「非友好国」の人間だからだという。
DJIはロイターに対し、4月にロシア及びウクライナでの事業を停止しており、戦争行為における利用に関して、さまざまな国・地域における法令遵守要件の評価を進めているところだと述べている。
同じチャットルームへの5月18日の投稿では、「ロマン」と名乗る人物が、「友よ、私たちは前線に送る人道支援を集めている。兵士たちが無線機を16台、緊急に必要としている。推奨モデルは、モトローラDP4800/DP4801、ハイテラTC-508だ」と書いている。ロイターはこのメッセージの投稿者への連絡を試みたが、実現しなかった。
この非公開チャンネルへの投稿や、参加者4人によれば、購入した物品は集積され、通常はバルイキ及び州都ベルゴロドに設けられた拠点で軍に引き渡される。ロイターでは、どの程度の物品が集まったか確認することができなかった。
この「テレグラム」上のチャンネルには、迷彩服に目出し帽を着用した複数の男性が、寄付された備品の入った箱を持ち、それを提供した寄付者に感謝の言葉を述べる動画が掲載されている。5月23日の投稿では、1人の男性が、小さなドローンの包装を解きながら、「同志諸君、我々を見捨てずにいてくれたことに感謝する」と話している。
ベルゴロド市内で国家機関に勤務する人物は、自身を含む職員らに対し、ウクライナにいるロシア軍部隊のため、ドローンと赤外線照準器の購入費用として1日分の給与を寄付するよう上司から指示があったとロイターに語った。報復が懸念されるため、氏名と勤務先については伏せてほしいと希望している。ロイターでは、彼女が公的機関の職員であることを独自に確認している。
「泣けてきた」
ロイターは、バルイキの基地に所属しウクライナに派遣された兵士の母親と称する女性に話を聞いた。紛争が始まって以来、自宅から4時間近くかかるバルイキまで、2回も車を走らせたという。戦闘糧食が不足しているため、息子の所属部隊に食料を届けることが目的だ。息子の所属部隊には靴底が破損したブーツを履いている兵士もいるし、綿の裏地のついたキャンバス地の旧ソ連スタイルのジャケットでは寒さを防げないという。彼女も匿名を条件に取材に応じた。
息子の部隊の兵士らの冴えない様子を説明し、「その姿に泣けてしまった」と女性は言う。彼女はどの部隊かを明示していない。ロイターでは、この女性の息子がロシア軍所属であることについては独自に裏付けを得たが、具体的な部隊までは確認できなかった。
(翻訳:エァクレーレン)
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