最新記事

ウクライナ情勢

ドローンなど備品調達から洗濯まで 補給難のロシア軍を支える国境の町バルイキ

2022年6月12日(日)13時18分

「ルスラナ」というハンドルネームを使う管理者は、4月12日に「警察特殊部隊向けに、このタイプのドローンを少なくとも3機、16日までに緊急に必要だ」とチャットに投稿している。「多くのロシア軍兵士の命を救うために、どうしても必要だ」

投稿にはオンライン小売事業者のページのスクリーンショットが添付されている。事業者によれば、中国のドローン大手DJIテクノロジーが製造するクワッドコプター(4ローターのヘリコプター)だという。その時点で事業者が表示していた価格は9万2990ルーブル(約21万5000円)だった。

本記事のためにコメントを求めたところ、「ルスラナ」を名乗る人物は、軍への装備供給についての質問に回答することを拒否した。理由は、ロイターの所有者が「非友好国」の人間だからだという。

DJIはロイターに対し、4月にロシア及びウクライナでの事業を停止しており、戦争行為における利用に関して、さまざまな国・地域における法令遵守要件の評価を進めているところだと述べている。

同じチャットルームへの5月18日の投稿では、「ロマン」と名乗る人物が、「友よ、私たちは前線に送る人道支援を集めている。兵士たちが無線機を16台、緊急に必要としている。推奨モデルは、モトローラDP4800/DP4801、ハイテラTC-508だ」と書いている。ロイターはこのメッセージの投稿者への連絡を試みたが、実現しなかった。

この非公開チャンネルへの投稿や、参加者4人によれば、購入した物品は集積され、通常はバルイキ及び州都ベルゴロドに設けられた拠点で軍に引き渡される。ロイターでは、どの程度の物品が集まったか確認することができなかった。

この「テレグラム」上のチャンネルには、迷彩服に目出し帽を着用した複数の男性が、寄付された備品の入った箱を持ち、それを提供した寄付者に感謝の言葉を述べる動画が掲載されている。5月23日の投稿では、1人の男性が、小さなドローンの包装を解きながら、「同志諸君、我々を見捨てずにいてくれたことに感謝する」と話している。

ベルゴロド市内で国家機関に勤務する人物は、自身を含む職員らに対し、ウクライナにいるロシア軍部隊のため、ドローンと赤外線照準器の購入費用として1日分の給与を寄付するよう上司から指示があったとロイターに語った。報復が懸念されるため、氏名と勤務先については伏せてほしいと希望している。ロイターでは、彼女が公的機関の職員であることを独自に確認している。

「泣けてきた」

ロイターは、バルイキの基地に所属しウクライナに派遣された兵士の母親と称する女性に話を聞いた。紛争が始まって以来、自宅から4時間近くかかるバルイキまで、2回も車を走らせたという。戦闘糧食が不足しているため、息子の所属部隊に食料を届けることが目的だ。息子の所属部隊には靴底が破損したブーツを履いている兵士もいるし、綿の裏地のついたキャンバス地の旧ソ連スタイルのジャケットでは寒さを防げないという。彼女も匿名を条件に取材に応じた。

息子の部隊の兵士らの冴えない様子を説明し、「その姿に泣けてしまった」と女性は言う。彼女はどの部隊かを明示していない。ロイターでは、この女性の息子がロシア軍所属であることについては独自に裏付けを得たが、具体的な部隊までは確認できなかった。

(翻訳:エァクレーレン)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・【まんがで分かる】プーチン最強伝説の嘘とホント
・ウクライナのどさくさに紛れて「侵攻」を狙う、もうひとつの旧ソ連の国
・戦況マップ】ロシア軍は数日でこれだけ占領地域を失った
・遺体ばかりか負傷兵も置き去り──ロシア軍指揮官のプロ意識がさらに低下


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午前の日経平均は反発、自律反発広がる 買い一巡後は

ワールド

原油先物上昇、ホルムズ海峡の混乱長期化を警戒

ワールド

豪家計支出、1月は上向くもさえず 利上げ控え慎重姿

ワールド

ベネズエラ、近く鉱業改革実行へ 暫定大統領が米内務
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 2
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られる」衝撃映像にネット騒然
  • 3
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    「外国人が増え、犯罪は減った」という現実もあるの…
  • 6
    「イランはどこ?」2000人のアメリカ人が指差した場…
  • 7
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 8
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 9
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 10
    戦術は進化しても戦局が動かない地獄──ロシア・ウク…
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの…
  • 7
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 8
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 9
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 10
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中