最新記事

新型コロナウイルス

致死率わずか0.001%? 北朝鮮の「コロナ感染」データは絶対に何かがおかしい

2022年6月1日(水)17時50分
ジャスティン・フェンドス(韓国・東西大学教授)
マスク姿の金正恩

ソウルの駅の大型モニターに映し出されるマスク姿の金正恩(5月14日) AP/AFLO

<ついに新型コロナ感染を公表した北朝鮮だが、発表された数字はつじつまが合わない。そこにどんな意図があるのかを読み解く>

北朝鮮が5月12日、国内の新型コロナウイルス感染を初めて公表したが、多くの識者にとって以前から予想されていた事態だった。オミクロン株の高い感染力を考えれば、感染ゼロはあり得ない。

だが当局がさらなる感染爆発を発表した今、筆者はその信頼性に疑問を持たざるを得ない。理由は──数字が合わないからだ。

この記事の執筆時点で、北朝鮮は2週間で300万人以上の「発熱」を報告している。新型コロナの検査能力がほとんどないため、感染確認数の代わりに発熱数が使われることに違和感はない。一方で、死者数は68人にとどまっている。少なくともどちらかの数字が間違っているはずだ。

発熱者を額面どおりに新型コロナ感染者とするなら、死者数はもっと多くないとおかしい。例えば、オミクロンは感染者の25~50%に発熱症状が出ることが分かっている。発熱が事実なら、少なくとも600万人が感染したことになり、死者数が68人なら致死率はわずか0.001%だ。

韓国では冬のオミクロン流行時、ワクチン接種率が82%を超えていたもかかわらず、致死率は0.12%とはるかに高かった。それを考えると、北朝鮮の数字は信じられないと言わざるを得ない。

もちろん、報告された発熱のかなりの部分が季節性インフルエンザなど、他の病気によるものだった可能性はある。だが、わずか2週間で300万人の発熱者が出たという報告は、一般的な病気としては極めて異例だ。

考えられる北朝鮮の「実態」とは

もう1つ奇妙なのは、北朝鮮がヒョン・チョルヘ元帥の大規模な葬儀を強行したように見えることだ。本当に新型コロナの感染者が数百万人いて、流行が続いているとしたら、当局は数千人が通りに並ぶことを許可するだろうか。

考えられるシナリオはいくつかある。まず、実際には感染爆発が起きていないケースだが、その可能性は低そうだ。北朝鮮の医師たち(何らかの形で情報交換をしているはずだ)が誰も発熱の診断をしていなかったとしたら、当局が数百万人の発熱を主張することは可能だろうか。

第2のシナリオは、新型コロナの軽い流行はあったが、当局がもう沈静化したと判断しているケース。この場合、北朝鮮メディアは新型コロナ対策の成功を誇示するため、致死率を低く(つまり、発熱者数を死者数に対して過大に)報道するはずだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

再送-仏ペルノ・リカール、ジャックダニエル製造元の

ワールド

ブラジル、原油高でインフレ率の目標超え続く見通し=

ビジネス

午前のドルは159円半ばへ小幅安、手控えムード イ

ビジネス

英自動車生産、2月は17%超減 「極めて憂慮」=業
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終回に世界中から批判殺到【ネタバレ注意】
  • 3
    「俺たちはただの人間だ」――BTSが新アルバム『ARIRANG』に託した想い、全14曲を【徹底分析】
  • 4
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 5
    意外と「プリンス枠」が空いていて...山崎育三郎が「…
  • 6
    デンマーク王妃「帰郷」に沸騰...豪州訪問で浮かび上…
  • 7
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 8
    親の遺産はもう当てにできない? ベビーブーム世代…
  • 9
    トランプが誤算? イラン攻撃延期の舞台裏、湾岸諸国…
  • 10
    「予想よりも酷い...」ドラマ版『ハリー・ポッター』…
  • 1
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 2
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 3
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラリアの「NVES規制」をトヨタが切り抜けられた理由
  • 4
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 5
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 6
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 7
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 8
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 9
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 10
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中