最新記事

食糧危機

プーチンの「飢餓計画」:途上国を兵糧攻めにしてEUに難民危機を引き起こす

Putin Has Ukraine War 'Hunger Plan' to Destabilize EU With Refugees: Snyder

2022年6月13日(月)17時40分
ファトマ・ハレド

ロシア軍の砲撃でサイロごと燃え上がった穀物(5月31日、ドネツク) Serhii Nuzhnenko-REUTERS

<ロシアによる海上封鎖はウクライナ産穀物に依存する国々やEUを巻き込む「飢餓計画」の一環だ>

ウクライナ侵攻中のロシアが黒海を封鎖している問題について、エール大学の歴史学者ティモシー・スナイダー教授はその意図は「難民を生み出すこと」、さらにはEU域内を不安定化させることにあると分析した。

「プーチンの飢餓計画には、ウクライナ産の食糧に依存している北アフリカや中東からの難民を生み出し、EUを不安定化を生み出す意図もある」とスナイダーは11日、ツイッターに投稿した。

ウクライナは世界有数の穀物輸出国だ。ロシアによる黒海の海上封鎖は、ウクライナからの輸入穀物に大きく依存している少なからぬ国々の食糧供給を脅かしている。

スナイダーはまた、もし海上封鎖が続けば「数千万トンに及ぶ食糧が貯蔵庫の中で腐ることになり」、その結果、アフリカやアジアで数多くの人々が「飢えることになるだろう」と警告した。

黒海に面したウクライナ南部オデーサ州のアラ・ストヤノワ副知事も、海上封鎖によってウクライナの穀物が滞留し、世界各地の食糧不足に拍車をかけることになると警告している。

世界に対するプーチンの「恐喝」

「プーチンの狙いは貧しい国々を飢餓に追い込むことだと私は思う。ウクライナの港を封鎖することで、彼は世界を恐喝しているのだ」と、副知事は先月、英紙テレグラフに掲載されたインタビューで述べている。

テレグラフによれば、オデーサを初めとするウクライナの港には通常、1日あたりコンテナ3000個の分の穀物が鉄道で到着し、大型の貯蔵庫に一時保管されるという。

世界では今年に入り、2億7600万人近い人々が深刻な飢餓を経験している。もしウクライナ侵攻が続けば、深刻な飢餓を経験する人の数はさらに4700万人上乗せされるかも知れない。特に危惧されるのはサハラ砂漠以南の地域だ。

先月、国連安全保障理事会では、ウクライナからの穀物輸出が大きく減少したことで、イエメンやナイジェリア、南スーダン、エチオピアなどの国々が食糧危機のリスクにさらされていると指摘された。

国連世界食糧計画(WFP)も先ごろ、ウクライナの港への封鎖が解かれなければ世界中で数多くの人々が「飢えに向かって突き進む」ことになるだろうと警告を発した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    メーガン妃の「下品なダンス」炎上で「王室イメージ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中