最新記事

ウクライナ戦争

中国からあの米同盟国まで ロシアを支持・支援する国は世界人口の半分以上

THE WEST VS. THE REST

2022年5月10日(火)16時55分
アンジェラ・ステント(ブルッキングス研究所シニアフェロー)

220517p22_RSA_05.jpg

国連人権理事会におけるロシアの理事国資格停止に24カ国が反対し58カ国が棄権 ANDREW KELLY-REUTERS

メキシコも、アメリカやカナダと並んで北米3カ国が一致してロシアを非難することを拒んだ。そして政権与党の「国家再生運動」は、侵攻後の3月下旬にメキシコ・ロシア友好議員団を立ち上げている。

そこまでロシアに傾く背景には、1970年代からの左派系反米思想の余韻があるのかもしれない。ロシアにとっては、新たに西側陣営に不和の種をまくチャンス到来だ。

「その他の国々」の総人口は世界の半数を超えるが、途上国が多いので経済力は乏しい。経済力や地政学上の影響力で考えれば、西側諸国は「その他の国々」をはるかに上回る。

それでも、今の戦争が終わった後に出現するであろう新たな世界秩序には、「その他の国々」の強烈な存在感が刻まれるはずだ。

その中核には中国とインドがいて、おそらくはロシアの居場所も守られる。

一方、アメリカはヨーロッパにおける軍事的プレゼンスを増すことになる。ロシアと地理的に近いNATO加盟国に、米軍が常駐する可能性も否定できない。

皮肉なもので、NATOの東方拡大を阻止したくてウクライナに侵攻したプーチンは、かえってNATOの結束を固めることになった。スウェーデンやフィンランドのNATO加盟も現実味を帯びてきた。

だがロシアがプーチンのものである限り、NATO陣営はロシアの封じ込めを続ける。プーチンの引退後も「東のロシア対西のNATO」という構図は変わらないだろう。

しかし21世紀の今、そうした東西冷戦の構図が再現できるものだろうか。

いわゆる「その他の国々」は、どちらの陣営に加わることも拒むだろう。そして新たな「非同盟」諸国が出現し、いくら欧米がプーチンをのけ者扱いしても、ロシアとの関係を維持することになるだろう。

このままならロシア経済は一段と疲弊し、中国に頼るしかなくなる。

それでもロシアはロシアだ。ロシアに嫌われたくない「その他の国々」は、きっとたくさんある。

From Foreign Policy Magazine

ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

三菱重、今期の受注高見通し6.1兆円に上積み エナ

ビジネス

三菱重、国内の陸上風力発電設備事業売却へJパワーと

ワールド

トランプ米政権、造船業・海上物流巡り中国と交渉へ

ワールド

高市首相、プライマリーバランス黒字化「数年単位で確
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 5
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 6
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 9
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 10
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中