最新記事

選挙

フランス極右ルペン、対ロ制裁のインフレ批判で「親プーチン」脱却

2022年4月14日(木)14時40分
フランス大統領選に挑む極右政党、国民連合(RN)のマリーヌ・ルペン

ロシアがウクライナで戦争をしている影響で、食品や肥料、生活必需品は値上がりを続けるだろう。フランス政府が行動を起こさない限り――。フランス大統領選に挑む極右政党、国民連合(RN)のマリーヌ・ルペン氏(53)はパリ南郊の農村部で、農家の人々を前にシンプルなメッセージを発していた。4月12日、仏北部ベルノンで撮影(2022年 ロイター/Sarah Meyssonnier)

ロシアウクライナで戦争をしている影響で、食品や肥料、生活必需品は値上がりを続けるだろう。フランス政府が行動を起こさない限り――。フランス大統領選に挑む極右政党、国民連合(RN)のマリーヌ・ルペン氏(53)はパリ南郊の農村部で、農家の人々を前にシンプルなメッセージを発していた。

自分が大統領になれば、欧州によるロシアの石油と天然ガスへの制裁を阻止し、エネルギー価格の上昇を抑えるとルペン氏は訴える。塩や調理用油など数十品目について付加価値税(VAT)を廃止し、インフレを退治して家計の所得を守るという。 

ウクライナ侵攻前、ロシアのプーチン大統領を公に称賛していたルペン氏にとって、ロシアの話題に踏み込むのは神経を使うことかもしれない。しかし、生活費への影響に的を絞った演説は、投票先選びに外交問題はほとんど関係ないと考える多くの有権者の心に響いている。


ルペン氏は、フランスのラジオで「ロシアへの制裁に反対しているわけではない。その他の制裁には全面的に賛成だ」と主張。「石油と天然ガスの輸入を止めるという決定によって、フランス国民が大打撃を被ることのないようにしたいのだ」と述べた。

ルペン氏は大統領選の決選投票で、現職のマクロン氏と対決する。仮にルペン氏が勝利すれば、欧州全体だけでなく、米政府までも震撼(しんかん)させるだろう。フランスに強度の欧州連合(EU)懐疑派の大統領が誕生し、北大西洋条約機構(NATO)を不安定化させる可能性もあるからだ。

2017年の大統領選決選投票で、ルペン氏はマクロン氏に大敗を喫した。その前、プーチン氏はルペン氏を大統領府に暖かく迎えた。ルペン氏はプーチン氏に敬意を表し、同氏と同じ価値観を共有していると宣言。プーチン氏と当時のトランプ米大統領、そして自身がトップに立つことで「新しい世界秩序」が生まれるとぶち上げた。

当時のルペン氏陣営の選挙資金はロシアの銀行が一部融資し、ルペン氏は今も返済を続けている。

ルペン氏は、弁護士から政治家に転じた人物。欧米関係を是正し、フランスの国益にかなう形にするべきだと述べたことがある。また、フランスが望まない紛争に巻き込まれないよう、自国軍をNATOの指揮下から外すべきだというルペン氏の提案が通れば、プーチン氏にとって願ってもないことだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

世界の投資家心理が急回復、2月以来の強気水準=Bo

ワールド

中豪首脳会談、習氏「さらなる関係発展促進」 懸念が

ビジネス

中国GDP、第2四半期は5.2%増に鈍化 底堅さも

ワールド

トランプ氏の「芝居じみた最後通告」 ロシアは気にせ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 2
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 3
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 4
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 5
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 6
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 7
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 8
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 9
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 10
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中