最新記事

エネルギー

「日本を産油国に」と宣言して顰蹙かった藻類バイオマスエネルギー 今、再び注目される3つの理由

2022年4月2日(土)11時40分
渡邉 信(筑波大学 生命環境系 研究フェロー、MoBiolテクノロジーズ会長) *PRESIDENT Onlineからの転載
筑波大学研究フェロー、MoBiolテクノロジーズ渡邉信会長

筑波大学研究フェロー、MoBiolテクノロジーズ渡邉信会長 撮影=一志治夫


脱炭素社会の実現のために、藻類バイオマス燃料が再び注目を集め始めている。そのうえロシアウクライナ侵攻による深刻なエネルギー危機で、その存在感はさらに強くなるはずだ。筑波大学研究フェローでMoBiolテクノロジーズ会長の渡邉信氏は、この15年、藻類によるバイオマスエネルギーの研究に傾注してきた。10年ほど前「日本を産油国にする」と宣言して顰蹙を買ったという、藻類バイオマス燃料研究の第一人者に、その特性と研究の現況を聞いた――。


穀物エネルギーの300~800倍の生産能力

藻類は、地球上最古の生物のひとつで、地球の大気をつくったと言われ、昆布やワカメなど大きなものから、湖沼などにいる微少な藻類まで含めると、これまで分類されたものだけでも約4万種類も存在しています。その中からいくつかの微細藻類をピックアップし、高温高圧で処理することによってバイオ原油を生産しようというのがわれわれの研究です。

昔から藻類が石油資源であったことはわかっていました。第1次石油ショックのときに、不安定な化石燃料に頼るばかりでなく、バイオ燃料を、ということで、アメリカのエネルギー省が「藻類からバイオ燃料を」というプロジェクトを立ち上げたのが始まりでした。

以来、盛衰はあるものの、各国で藻類バイオマスエネルギーの研究は続けられてきました。次世代エネルギーは太陽光、風力、水素、穀物バイオマスといろいろありますが、藻にはそのいずれに対してもある種の優位性があります。たとえば、トウモロコシのような穀物エネルギーに比べて、藻には300~800倍ものオイル生産能力があり、食糧危機に影響を及ぼすこともないわけです。あるいは低炭素の観点からも有益です。

油脂植物と藻類のオイル生産効率比較

油脂植物と藻類のオイル生産効率比較。1haあたりの年間生産量は、トウモロコシの300~800倍(図表提供=渡邉信研究室)

下水での培養で課題の効率化を解決

私は、15年ほど前から、藻類によるバイオマスエネルギーの研究に傾注してきました。そして、5年前ほど前にはすでに、藻類を原油化することには成功していました。その時点での課題は、藻から原油を効率的かつ経済的に生産し利用することであって、その点が世間からも疑問視されていました。培養面積の確保とコストの問題です。

培養に、かなりの面積が必要になることから、淡水を使って培養することは、水資源の枯渇問題がからんできます。また、燃料をつくるまでのプロセスで、つくる以上のエネルギーが必要になったら意味がなく、燃料生産においてエネルギー消費が少ないことは絶対でした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ホリデーシーズンのオンライン支出、過去最高の25

ワールド

米、ベネズエラ原油取引・収入の管理必要 影響力確保

ワールド

トランプ氏、NATO支持再確認 「必要なときに米を

ワールド

トランプ氏との会談望む、同盟国から安全保証の明確な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじゃいる」──トランプの介入口実にデンマーク反発
  • 4
    日本も他人事じゃない? デジタル先進国デンマークが…
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    マドゥロ拘束作戦で暗躍した偵察機「RQ-170」...米空…
  • 7
    トランプがベネズエラで大幅に書き換えた「モンロー…
  • 8
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び…
  • 9
    衛星画像で見る「消し炭」の軍事施設...ベネズエラで…
  • 10
    若者の17%が就職できない?...中国の最新統計が示し…
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 9
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 10
    感じのいい人が「寒いですね」にチョイ足ししている…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中