最新記事

ドローン

ウクライナ、趣味用ドローン数百台が偵察作戦で活躍

2022年3月11日(金)18時50分
青葉やまと

民間人で構成されるウクライナ領土防衛隊が、モロトフカクテル(火炎瓶)を落下させるために改造したドローン REUTERS/Mykola Tymchenko

<ウクライナ国防省の呼びかけに応じ、数百台の小型ドローンが寄贈された。熟練の市民ユーザーたちが軍に協力し、上空からロシア勢力の動向を監視している>

ウクライナ国防省はFacebookへの投稿を通じ、同国内の趣味のドローン・ユーザーたちに協力を要請した。ドローンを所持している、あるいは操縦技術の腕に覚えのある市民に対し、軍の偵察活動への協力を呼びかけている。

愛好家たちは、この要請に続々と反応。ドローン搭載のカメラでロシア軍を捉え、その位置と動向をリアルタイムでウクライナ軍に伝えている。近年小型ドローンは戦地でも運用されているものの、国家が正式に民間のドローン活用を要請するのは世界初とみられる。

市販品とはいえ、暗視カメラや熱感知、そして高倍率ズームなどを搭載する機種も存在しており、偵察用途として十分な実用性を備える。ドローン・ユーザーたちは愛機を持ち寄ったうえで、偵察担当や通信担当などに分かれ、組織として偵察をこなしている。

AP通信は動画にて、実際にドローンを活用する現場の様子を伝えている。軍と市民が連携したチームとみられ、空き部屋に無線機とプロジェクター、机とホワイトボードなどを持ち込み、臨時の作戦室としている。ドローンからの映像を複数の画面でモニタリングしながら、操縦者と無線で連絡を取り、リアルタイムの動向を収集している模様だ。

Ukrainian drone enthusiasts detect Russian forces


販売店も協力 数百台を寄贈

民生品活用の潮流に、販売店も加わった。ウクライナでドローン販売店を3店運営するタラス・トロイアク氏は、1日あたりおよそ100台のドローンを数日にわたり提供している。別のドローン製造業社は、300台の在庫すべてをウクライナ軍に寄贈した。

性能の良いドローンともなると、時速60キロ前後での高速飛行が可能だ。さらに、サイズは20センチから数十センチほどと、通常の兵器に比べて非常に小型となっている。このため、仮に敵のヘリまたは戦闘機に発見されたとしても、追撃を逃れやすい利点がある。

RTXCNHJX.JPGウクライナ軍も以前からドローンの訓練を行なっていた 2021年 EUTERS/Gleb Garanich


偵察以外にも用途は幅広く、爆撃現場での救難者の発見や、民間の建物被害の証拠収集などにも活用する機運が広がる。ウクライナは近隣の欧州諸国からの輸入を拡大し、さらに多数を配備したい意向だ。

小型ドローンは通常、空撮などの趣味や種まきなどの産業用途に利用されている。防衛への転用を知った国外の人々はSNS上で、「ウクライナの人々を尊敬する。なすべきことがあるとき、彼らはやる。問題があるとき、彼らは解決法を探す」などと述べ、市販品を柔軟に活用する姿勢に敬意を示している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ロシアがウクライナを大規模攻撃、3人死亡 各地で停

ワールド

中国、米国に核軍縮の責任果たすよう要求 米国防総省

ビジネス

三井住友トラスト、次期社長に大山氏 海外での資産運

ビジネス

台湾の11月輸出受注、39.5%増 21年4月以来
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 5
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 6
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 7
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中