最新記事

チェルノブイリ原発で停電、放射性物質拡散の恐れ ウクライナ、復旧作業へロシアに停戦要求

2022年3月10日(木)08時45分
チェルノブイリ原発

ウクライナ国営原子力発電会社はロシア軍が占拠しているチェルノブイリ原子力発電所で、送電網が損傷し停電が起きていると明らかにした。写真はチェルノブイリ原発。2018年11月撮影(2022年 ロイター/Gleb

ウクライナ国営原子力発電会社は9日、ロシア軍が占拠しているチェルノブイリ原子力発電所で、送電網が損傷し停電が起きていると明らかにした。これにより使用済み核燃料を冷却できず、放射性物質が大気中に広がる可能性があると指摘した。現地で交戦が行われているため、復旧作業ができないとしている。

国際原子力機関(IAEA)は、停電で安全性に重大な影響が及ぶことはないと表明。ただチェルノブイリ原発のシステムに詳しい専門家は、原発への電力供給停止は危険をはらむとし、早期復旧が重要との見方を示している。

国営原子力発電会社は声明で、使用済み核燃料が温まると「大気中に放射性物質が放出される可能性がある。放射能を含む雲が風でウクライナ国内やベラルーシ、ロシアや欧州に運ばれる可能性がある」と表明。

電力供給が止まると換気設備も稼働せず、発電所の職員が大量の放射能を浴びることになると指摘した。

IAEAは8日、チェルノブイリ原発の放射性廃棄物施設からのデータ送信が途絶えたと明らかにしていた。

ウクライナのクレバ外相は9日、復旧作業ができるよう、ロシアに一時停戦を即時に順守するよう要求した。

クレバ外相はツイッターで「チェルノブイリ原発の予備電源がもつのは48時間だ。それを過ぎると、使用済み核燃料の冷却システムが止まり、放射能漏れが起こることが予想される」と指摘。「ロシアに対し停戦と電力供給の復旧を緊急に要求するよう国際社会に呼び掛ける」と述べた。

IAEAは、チェルノブイリ原発の停電により安全性に重大な影響が及ぶことはないと表明。声明で「チェルノブイリ原発の使用済み燃料貯蔵プールの熱負荷と冷却水量は電力供給がなくとも効率的な熱除去が十分可能」とした。

ただ、国営原子力発電会社によると、チェルノブイリ原発には停電時に冷却できない使用済み燃料集合体が約2万体あり、それらが温まると「大気中への放射性物質の放出」につながる可能性があるという。

首都キエフから約100キロ離れた地点にあるチェルノブイリ原発は旧ソ連時代の1986年4月に爆発事故を起こし、大量の放射性物質が飛散した。

同原発のシステムに詳しい専門家は、状況を懸念しているとし、電力の早期復旧が重要になると指摘。「停電で貯蔵施設の水が蒸発し、使用済み燃料棒が露出する可能性がある。そうなれば使用済み燃料棒が溶融し、重大な放射線の放出につながる恐れがある」と警告した。

ロシアのインタファクス通信によると、ロシア国防省はウクライナ軍がチェルノブイリ原発の送電線と変電所を攻撃したと指摘。「危険な挑発行為」と非難した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・【まんがで分かる】プーチン最強伝説の嘘とホント
・「ロシア人よ、地獄へようこそ」ウクライナ市民のレジスタンスが始まった
・ウクライナに「タンクマン」現る 生身でロシア軍の車列に立ち向かう
・ウクライナ侵攻の展望 「米ロ衝突」の現実味と「新・核戦争」計画の中身


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン交戦は国連憲章違反、学校攻撃にも深い衝撃=独

ワールド

トルコ、イランの弾道ミサイル迎撃 NATO防空シス

ビジネス

米2月ISM非製造業指数、56.1に上昇 3年半ぶ

ワールド

米潜水艦がイラン軍艦を魚雷で撃沈、87人死亡 スリ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 2
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られる」衝撃映像にネット騒然
  • 3
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    「外国人が増え、犯罪は減った」という現実もあるの…
  • 6
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 7
    戦術は進化しても戦局が動かない地獄──ロシア・ウク…
  • 8
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 9
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 10
    「イランはどこ?」2000人のアメリカ人が指差した場…
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの…
  • 7
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 8
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 9
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 10
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中