最新記事

提言

チャールズ皇太子【特別寄稿】2人の息子の行動を誇りに思う...気候変動に戦時の危機感を

THE ROYAL PLAN

2022年2月11日(金)16時47分
チャールズ英皇太子

220215P46_CLS_02.jpg

ALGI FEBRI SUGITAーSOPA IMAGESーLIGHT ROCKET/GETTY IMAGES

かつての月面着陸であれ、新型コロナウイルスのワクチン開発であれ、人間はとても解決できそうにない難問を解決する能力を証明してきた。故郷である地球を守り抜きたいなら、私たちはその能力を今一度証明しなければならないし、そうできると私は信じている。

今が運命の分かれ目と信じる根拠は大いにある。

2021年11月に英グラスゴーで開催された国連気候変動枠組み条約第26回締結国会議(COP26)で合意が採択されたのは、有益で重要な進展だった。COP26では気候危機の深刻さを国際間で改めて認識し、各国首脳は説明責任を負うことに対して勇気と積極性を示した。無為無策が子供や孫の世代に及ぼす影響に焦点が置かれたのは、当然だろう。

現実を無視してはいけない

だが、うわべが必ずしも当てにならないことを、私たちは知っている。これまでも国際会議で同様の合意が採択されたりメディアで報じられたりしたが、結局目標は達成されず、期待外れに終わった。

だが、今回は勢いを失うわけにはいかない。21年を偽りの希望の年にしてはならない。気候変動と生物的多様性の喪失は脆弱な土地に住む数千万人の暮らしと生業に打撃を与え、彼らの居住地を人が住めない場所に変えている。この事実を無視し続けることは、断じてできない。

偽りの希望の爪痕を、私はこの目で見た。11月には世界で最も水の乏しい国の1つであるヨルダンでキリストが洗礼を受けた場所に立ち、水資源の枯渇を目の当たりにした。エジプトでは生態系が極めて脆弱なナイル川デルタの水資源と農業に気候変動が及ぼす壊滅的打撃について、話を聞いた。バルバドスでは国の存在そのものを脅かす海面上昇への不安を、住民からじかに聞いた。

こうした例は氷山の一角でしかない。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の最終報告書は、人間が過去2000年において例を見ないスピードで地球の気温を上昇させ、気象や気候の極端な現象を引き起こしていると結論付けた。

明らかなのは、私たちの行動がカギを握っているということだ。なすべきことは分かっている。人口が増加し限りある資源への需要が高まるなか、私たちは二酸化炭素(CO2)の排出量を削減しなければならない。火力発電所などから排出され既に大気中にあるCO2の回収にも、取り組む必要がある。CO2に適切な価格を付ければ、回収はより経済的に行うことができる。

数十億年の進化を経た今も、人間にとって最高の教師は自然だ。地球でよりサステナブル(持続可能)に生きる方法を模索する際にも、自然に導きを求めたい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マクロン氏、早期辞任改めて否定 政治混乱もたらした

ワールド

トランプ氏、ガザ戦争終結を宣言 人質と拘束者解放

ビジネス

米国株式市場=大幅反発、米中貿易戦争巡る懸念和らぐ

ワールド

ハマス、ガザ地区で対抗勢力と抗争 和平実現に新たな
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    車道を一人「さまよう男児」、発見した運転手の「勇敢な行動」の一部始終...「ヒーロー」とネット称賛
  • 4
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃を…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 7
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 8
    1歳の息子の様子が「何かおかしい...」 母親が動画を…
  • 9
    ウィリアムとキャサリン、結婚前の「最高すぎる関係…
  • 10
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル賞の部門はどれ?
  • 4
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 9
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 10
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中