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コロナによる「経済危機」は、むしろ社会的弱者に「恩恵」をもたらした

WHY THE PANDEMIC MIGHT NOT BOOST INEQUALITY

2022年1月12日(水)11時08分
ダニエル・グロー(欧州政策研究センター研究部長)

「大量退職時代」とも称される現在、アメリカでは労働者不足が深刻化し、企業は労働者を引き付けるべく高額な賃金を提示しなければならなくなっている。EU諸国の多くでは、一定の失業者を抱えつつ退職の動きも拡大しており、労働者不足は続きそうだ。低スキル労働者ほど需要がなくなる、という超長期的な傾向をパンデミックは加速させたが、短・中期的にはむしろ正反対の効果が見られそうだ。

例えば、オンラインショッピングの拡大で輸送や倉庫業務は増加する一方。遠い未来ではロボットやドローンが担うかもしれないこうした仕事も、現在は人間の手で行う必要がある。低スキル労働者の雇用見通しはコロナ禍以前よりずっと明るい。

経済的観点から見ると、コロナ危機が社会的弱者に及ぼした影響は、予測よりはるかに良いようだ。当初の収入低下は寛大な政府支援で補塡され、力強い経済回復で雇用も改善。パンデミックが3年目に入った今、これらを根拠にある程度楽観的な見方をしてもいいだろう。

©Project Syndicate

Column_DanielGros.jpgダニエル・グロー
DANIEL GROS
ドイツ出身の経済学者。IMFのアドバイザーなどを経て、現在はシンクタンク欧州政策研究センター研究部長。主な研究テーマはEUの経済政策で、欧州議会への助言も行う。

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