最新記事

経済格差

所得と貯蓄の世帯数集計で分かる、日本社会の「富の格差」

2021年11月10日(水)10時30分
舞田敏彦(教育社会学者)

この四半世紀で世帯単位の平均所得は100万円以上減った Ivan-balvan/iStock.

<日本で一番多いのは、年収100万円台で貯蓄ゼロの世帯という過酷な現実>

国民の生活は苦しくなっているが、その指標として使われるのは所得だ。1985年以降の推移を見ると、世帯単位の平均所得のピークは1994年の664万円だったが、2002年に600万円を割り、2019年では552万円となっている(厚労省『国民生活基礎調査』)。この四半世紀で100万円以上減ったことになる。中央値は437万円だ。世帯の単身化、高齢化が進んでいるとはいえ、国民の稼ぎが減っていることは明らかだ。

だが収入は少なくても(なくても)、貯蓄が多いという世帯もある。リタイアした高齢者世帯などだ。生活のゆとりの分布を知るには収入だけではなく、いざという時の備え、湯浅誠氏の言葉で言う「溜め」にも注目しないといけない。所得階級と貯蓄階級のマトリクスにて世帯数を集計した表が、上記の厚労省調査(2019年)に出ている。これをもとに、所得500万円台・貯蓄700万円台の世帯の数といった情報を知れる。<図1>は、結果をグラフで視覚化したものだ。

data211110-chart01.png

横軸は所得、縦軸は貯蓄額の階級で、この2つを組み合わせた各セルに該当する世帯数がドットサイズで示されている。一見して、所得・貯蓄とも少ない困窮世帯が多いことが分かる(左下)。所得300万未満、貯蓄200万未満の世帯は全体の15.1%に当たる(緑の枠線内)。その一方で右上の富裕世帯も結構あり、社会の富の格差も見て取れる。

ちなみに「日本で一番多い世帯は?」という問いへの答えは、上記のグラフのドットサイズから、所得100万円台・貯蓄ゼロの世帯ということになる。単身非正規の若者、ないしはカツカツの暮らしをしている高齢者世帯などが多いと想像されるが、強烈な現実だ。所得と貯蓄を合わせて見ても、日本社会の貧困化が進んでいるのが分かる。

赤丸は所得・貯蓄とも100万円未満の世帯で、生活困窮のレベルが甚だしく、生活保護の対象のレベルだ。全体の3.2%に相当し、2019年1月時点の全世帯数(5853万世帯)に掛けると、実数で見ておよそ187万世帯と見積もられる。現実の生活保護受給世帯はどうかと言うと、同年7月時点の被保護世帯数は約162万世帯(厚労省『被保護者調査』)。生活保護は、困窮世帯を十分に掬えて(救えて)いない。日本の生活保護の捕捉率の低さは、よく指摘される。

今、あなたにオススメ

ニュース速報

ワールド

NATO、ウクライナへのインフラ支援強化を約束 外

ビジネス

日産と仏ルノー、提携関係の再構築発表に向け日程調整

ワールド

英政府、BBC記者への対応巡り中国大使を呼び出し

ビジネス

米CB消費者信頼感、11月100.2に低下 期待イ

今、あなたにオススメ

MAGAZINE

特集:台湾半導体 王国に迫るリスク

2022年12月 6日号(11/29発売)

急成長で世界経済を席巻するTSMC。中国から台湾を守る「シリコンの盾」に黄信号が?

メールマガジンのご登録はこちらから。

人気ランキング

  • 1

    「犬は飼い主に忠誠心をもつ」は間違い 研究で判明した「犬が本当に考えていること」

  • 2

    「性的すぎる」広告批判は海外でも...高級ブランドが、子供を対象にして大炎上

  • 3

    ロシアはウクライナでなく日本攻撃を準備していた...FSB内通者のメールを本誌が入手

  • 4

    自分を「最優先」しろ...メーガン妃、ヘンリー王子へ…

  • 5

    本当にただの父娘関係? 24歳モデルと父親の写真、距…

  • 6

    英語習得のコツは実はシンプル! 「簡単な本の音読」…

  • 7

    プーチン「重病説」を再燃させる「最新動画」...脚は…

  • 8

    やはり「泣かせた」のはキャサリン妃でなく、メーガ…

  • 9

    名画を攻撃する環境活動家の行動は、「無意味」だが…

  • 10

    メーガン妃の今後を案じ、ヘンリー王子が「絶望」を…

  • 1

    ロシアはウクライナでなく日本攻撃を準備していた...FSB内通者のメールを本誌が入手

  • 2

    プーチン「重病説」を再燃させる「最新動画」...脚は震え、姿勢を保つのに苦労

  • 3

    カメラが捉えたプーチン「屈辱の50秒」...トルコ大統領、2年前の「仕返し」か

  • 4

    「性的すぎる」広告批判は海外でも...高級ブランドが…

  • 5

    飛行機の両隣に肥満の2人! 「悪夢の状況」をツイー…

  • 6

    「犬は飼い主に忠誠心をもつ」は間違い 研究で判明し…

  • 7

    うつ病とは「心のバッテリー」が上がること...「考え…

  • 8

    本当にただの父娘関係? 24歳モデルと父親の写真、距…

  • 9

    「プーチンの犬」メドベージェフ前大統領の転落が止…

  • 10

    父親は「連続殺人鬼」 誰も耳を貸さなかった子供の訴…

  • 1

    セレブたちがハロウィンに見せた本気コスプレ、誰が一番? 「見るに堪えない」「卑猥」と酷評されたのは?

  • 2

    ロシアはウクライナでなく日本攻撃を準備していた...FSB内通者のメールを本誌が入手

  • 3

    血糖値が正常な人は12%だけ。「砂糖よりハチミツが健康」と思っている人が知るべき糖との付き合い方

  • 4

    本当にただの父娘関係? 24歳モデルと父親の写真、距…

  • 5

    カメラが捉えたプーチン「屈辱の50秒」...トルコ大統…

  • 6

    プーチン「重病説」を再燃させる「最新動画」...脚は…

  • 7

    「セクシー過ぎる?」お騒がせ女優エミリー・ラタコ…

  • 8

    食後70分以内に散歩、筋トレ、階段の上り下り。血糖…

  • 9

    キャサリン妃に「冷え切った目」で見られ、メーガン…

  • 10

    自分を「最優先」しろ...メーガン妃、ヘンリー王子へ…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集
日本再発見 シーズン2
World Voice
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
CCCメディアハウス求人情報

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中

STORIES ARCHIVE

  • 2022年11月
  • 2022年10月
  • 2022年9月
  • 2022年8月
  • 2022年7月
  • 2022年6月